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ナムジャイブログ

2020年10月05日

都バスから眺める風景

 東京もすっかり秋めいてきた。沖縄はかなり風が強く、体感温度がさがり、「暑さも峠を越したか……」と思いながら帰京した。しかし東京は、沖縄とは格が違う涼しさに包まれていた。
 僕の家には狭い庭があり、そこにキンモクセイの木がある。家に帰ると、そこにオレンジ色の花が咲いていた。
 今年、家の南側に新しい家が建った。キンモクセイの枝が南隣の敷地にのびていた。その枝をずいぶん切った。痛めつけられたが、キンモクセイはしぶとく花をつけ、甘い香りを放つ。妻によると、去年より花の密度が少ないというが。
 東京の新型コロナウイルスの感染者はなかなか減らない。今日も100人を超える新規感染者が出ている。一時に比べれば、感染者数への関心もすっかり薄れ、日常のなかに織り込まれてきている。それよりも、確実にめぐってくる季節のほうが新鮮だ。
 今年の6月、事務所が移転した。いままで入居していたビルが建て替えることになったのだ。元の事務所の近くだが、最寄り駅が変わった。自宅から向かうと、地下鉄の乗り換えが必要になり、それもいったん先まで行って戻る感覚になる。いい手段はないだろうか……と試行錯誤を2週間ほど繰り返し、新宿駅から都バスという方法をみつけた。
 新宿駅を発車したバスは、歌舞伎町を通って進む。そういえば、東京の感染の第2波のはじまりは歌舞伎町だった……などと車窓を眺める。
 いまの都バスにはモニターがあり、そこで天気予報やニュースなどが映し出される。ときに、「都バス先生」という都バスのPRビデオが流れる。
「池袋と王子は都バスなら一本でつながっている」、「豊洲と東陽町の間も都バスなら直接……」といった内容を、高校を舞台に短いドラマに仕立てている。
 それをぼんやり眺めていることも多い。
 都バスは高齢者が安く乗ることができるパスを発行しているので、老人が多い。
「皆、新型コロナウイルスには注意しているんだろうなあ」
 などとも考え、マスクの位置を直す。
 なぜ事務所に向かうのにバスが気に入ったのか。電車と違い、渋滞に巻き込まれることがあるバスは所要時間が読みにくい。
 電車とは違うちょっとした旅気分? そうなのかもしれない。花をつけたキンモクセイが新鮮に映るように、コロナ禍のなかでは、バスから眺める東京の街は意外と楽しい。いまだ感染が収束しない街でも、人々は動き、バスはそのなかをけなげに走っている。
 新型コロナウイルスが気づかせてくれたのは、そういう日常だとはわかっている。しかし僕のような年になると、これまでの人生に未練がある。そこまでのパワーはウイルスにはないことも、またわかっている。

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○クリックディープ旅=沖縄の離島のバス旅がはじまります。
○旅をせんとやうまれけむ=つい立ち止まってしまうアジアのいまを。
○アジアは今日も薄曇り=沖縄の離島のバス旅シリーズがはじまります。
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Posted by 下川裕治 at 12:50│Comments(0)
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