2018年12月10日
アメリカの世代交代
昨夜、アメリカの西海岸のシアトルに辿り着いた。前号は、メキシコのシウダード・ファレスからこのブログを送った。その翌日にアメリカのエルパソに入った。それ以来、ずっとバスに乗り続けている。ダラス、アトランタ、ニューヨーク、シカゴ、シアトル。ホテルに泊まったのは、シカゴの1泊だけ。あとはすべてバスの車内泊だった。
『12万円で世界を歩く』という30年ほど前の僕の本のコースを辿り、物価高のアメリカでなんとか費用を節約しようという旅。バスに染まる日々になってしまった。これから乗るバスがロサンゼルスに着けば、アメリカを一周したことになる。
エルパソでアメリカに再入国したが、入国審査で別室に入れられてしまった。僕のパスポートにパキスタンの入国記録があったからだ。職業やパキスタンでなにをしたのか……など、根掘り葉掘り。1時間近く質問攻めだった。ある程度は覚悟していたが。
それ以来、ずっとバスである。いまのアメリカのバスは昔ほど安くない。飛行機を使ったほうが安くあがる気もするが、こうしてずっぽりとアメリカに染まると、また別のアメリカが見えてくる。
グレイハウンドバスの運転手の高齢化はかなり進んでいた。はじめは経験を積まないと長距離バスの運転手になれないからかとも思ったが、そうでもないらしい。しかし50~60歳台の運転手は、皆、威厳があった。飛行機のパイロットのように堂々と乗客に接する。この自信はなんだろう……長いバスのなかでずっと考えていた。
以前のグレイハウンドバスに比べると、客はずいぶんおとなしくなった。前は飲酒や喫煙なども多く、それと運転手たちは向き合ってきた。こうしてグレイハウンドバスを守ってきたという過去もあるのだろうか。
しかしそれ以前に、年配のアメリカ人の自信のようなものを感じるのだ。その背後に横たわっているのは、アメリカがナンバーワンといういう自負のような気がする。
トランプ大統領はそのへんをくすぐる。しかしその手法は、自由貿易や移民に制限を加え、アメリカを守る発想だった。そこにねじれが生まれる。自由の国であるからこそ、アメリカはナンバーワンなのだと、考えるアメリカ人は少なくない。希望を抱いてアメリカに向かい、足場をつくった世界の人々は、自由なアメリカの寵児でもある。
グレイハウンドバスの乗客は、メキシコ人や黒人が多い。彼らに向かって、老練な運転手は、アメリカのルールを諭すかのように語りかける。フレンドリーな笑顔は失わず。
そんな運転手たちも、そろそろ引退の時期を迎える。大きな世代交代がアメリカで起きているということなのだろか。
■このブログ以外の連載を紹介します。
○クリックディープ旅=玄奘三蔵が辿ったシルクロードの旅。いまはインドから中国に戻る帰路編を連載中。
○どこへと訊かれて=人々が通りすぎる世界の空港や駅物。
○東南アジア全鉄道走破の旅=苦戦を強いられている東南アジア「完乗」の旅。いまは番外編を連載中。
○タビノート=LCCを軸にした世界の飛行機搭乗記
『12万円で世界を歩く』という30年ほど前の僕の本のコースを辿り、物価高のアメリカでなんとか費用を節約しようという旅。バスに染まる日々になってしまった。これから乗るバスがロサンゼルスに着けば、アメリカを一周したことになる。
エルパソでアメリカに再入国したが、入国審査で別室に入れられてしまった。僕のパスポートにパキスタンの入国記録があったからだ。職業やパキスタンでなにをしたのか……など、根掘り葉掘り。1時間近く質問攻めだった。ある程度は覚悟していたが。
それ以来、ずっとバスである。いまのアメリカのバスは昔ほど安くない。飛行機を使ったほうが安くあがる気もするが、こうしてずっぽりとアメリカに染まると、また別のアメリカが見えてくる。
グレイハウンドバスの運転手の高齢化はかなり進んでいた。はじめは経験を積まないと長距離バスの運転手になれないからかとも思ったが、そうでもないらしい。しかし50~60歳台の運転手は、皆、威厳があった。飛行機のパイロットのように堂々と乗客に接する。この自信はなんだろう……長いバスのなかでずっと考えていた。
以前のグレイハウンドバスに比べると、客はずいぶんおとなしくなった。前は飲酒や喫煙なども多く、それと運転手たちは向き合ってきた。こうしてグレイハウンドバスを守ってきたという過去もあるのだろうか。
しかしそれ以前に、年配のアメリカ人の自信のようなものを感じるのだ。その背後に横たわっているのは、アメリカがナンバーワンといういう自負のような気がする。
トランプ大統領はそのへんをくすぐる。しかしその手法は、自由貿易や移民に制限を加え、アメリカを守る発想だった。そこにねじれが生まれる。自由の国であるからこそ、アメリカはナンバーワンなのだと、考えるアメリカ人は少なくない。希望を抱いてアメリカに向かい、足場をつくった世界の人々は、自由なアメリカの寵児でもある。
グレイハウンドバスの乗客は、メキシコ人や黒人が多い。彼らに向かって、老練な運転手は、アメリカのルールを諭すかのように語りかける。フレンドリーな笑顔は失わず。
そんな運転手たちも、そろそろ引退の時期を迎える。大きな世代交代がアメリカで起きているということなのだろか。
■このブログ以外の連載を紹介します。
○クリックディープ旅=玄奘三蔵が辿ったシルクロードの旅。いまはインドから中国に戻る帰路編を連載中。
○どこへと訊かれて=人々が通りすぎる世界の空港や駅物。
○東南アジア全鉄道走破の旅=苦戦を強いられている東南アジア「完乗」の旅。いまは番外編を連載中。
○タビノート=LCCを軸にした世界の飛行機搭乗記
Posted by 下川裕治 at 19:44│Comments(0)
※このブログではブログの持ち主が承認した後、コメントが反映される設定です。