2025年05月19日
2週間後にはまた夜行便
最近、飛行機の夜行便に乗ることが多い。先週、バンコクから帰国したが、午前1時半にバンコクを発ち、北京経由で東京に午後の2時頃に着く便だった。
次回はソウル経由でバンコク、そしてバングラデシュというルートだが、東京を発つのがやはり午前1時半である。
機内ではそう眠ることができないから、寝不足の判断力のない頭で現地に着く。そのときの思考回路をどう表現したらいいのだろうか。ひとつのことにこだわると、それがなかなか頭から抜けず、いつまでも同じところをぐるぐるまわっているような感じになる。判断力が薄れ、先に進まないのだ。
それを救ってくれるのが仮眠である。現地の電車のなかや宿で少し寝る。すると頭のなかが若干整理されてくる。こうして夜行明けの1日が終わっていく。夜になると、波のように襲ってくる疲れのなかで目を閉じる。俗にいう爆睡のモードに堕ちていく。
無理をしていると自分でも思う。しかしそんなフライトが最近増えてきているようにも思うのだ。
夜行をよく使うようになったのは、ソウル経由でバンコクに向かうことが多くなってきてからだ。午前1時半に羽田空港を発つ飛行機に乗ると、午前4時頃、ソウルの仁川国際空港の到着階に出る。いつもの仮眠スペースでしばらく寝る。午前中から午後にかけてソウル市内で用事をすませ、夕方には仁川国際空港に戻る。バンコクに向かう夕方便が待っている。
飛行機のチケットでいうと、トランジット扱いである。トランジットというのは、飛行機の乗り継ぎのことだ。通常は空港内で次の便を待つのだが、その時間を使って市内まで向かう。ソウルを訪ねたような気分のなかで用事をすませる。運賃的にも東京ーソウル、ソウルーバンコクというふたつのフライとを買うより安くなる。
トランジット時間は、その国や空港によって決められている。だいたいが24時間。日をまたぐとトランジットにならないという国や空港もある。うまく使えば、ひとつのフライトで2ヵ国を訪ねる感覚になる。お得感がある。そこにはまっていくと、夜行便に辿りついてしまうのだ。
夜行便を乗りこなしていくコツは、いかにあの狭い機内で寝るかという一点に収れんしてくる。コロナ禍のときは飛行機もすいていて、何席も使って腰をのばして眠ることができたが、最近はそうもいかない。僕はリクライニングを倒すと、どうも腰に負担がかかってしまう。背もたれは倒さず、できるだけ足を前にのばす。前の席の下に足を滑り込ませるような態勢がよく眠れる。それとフードが深いジャンパー。フードをすっぽり被ると、暗くなる。アイマスクと違い、目に圧力がかからない。これはインドの夜行バスで身に着けた。飛行機に乗り込むと、気分は睡眠モードに入っていくから、フードをすっぽり被って目を閉じる。だから機内に流れる安全のためのビデオはほとんど観たことはない。離陸の瞬間も記憶が薄い。
夜行便は離陸しても普通は食事は出ない。飛行機が到着する2時間前ぐらいには起こされて朝食……というパターンだ。僕はスターアライアンスのマイルを貯めているので、食事が出る飛行機に乗ることが多い。
空腹でもないが、オムレツなどの朝食を胃に押し込むように食べ、またフードを被って寝る。
しかしその睡眠は浅く、時間も短い。それがわかっているから、出発前に早めに搭乗口に向かう。隅の椅子で横になる。ときどき熟睡してしまうことがある。航空会社のスタッフに起こされ、周囲を見ると誰もいないことも多い。皆、搭乗してしまっているのだ。申し訳ないと思いながら飛行機に乗り込む。
こんなことを毎回、繰り返している。2週間後にはまた夜行便である。
■YouTube「下川裕治のアジアチャンネル」
https://www.youtube.com/channel/UCgFhlkMPLhuTJHjpgudQphg
面白そうだったらチャンネル登録を。
■ツイッターは@Shimokawa_Yuji
次回はソウル経由でバンコク、そしてバングラデシュというルートだが、東京を発つのがやはり午前1時半である。
機内ではそう眠ることができないから、寝不足の判断力のない頭で現地に着く。そのときの思考回路をどう表現したらいいのだろうか。ひとつのことにこだわると、それがなかなか頭から抜けず、いつまでも同じところをぐるぐるまわっているような感じになる。判断力が薄れ、先に進まないのだ。
それを救ってくれるのが仮眠である。現地の電車のなかや宿で少し寝る。すると頭のなかが若干整理されてくる。こうして夜行明けの1日が終わっていく。夜になると、波のように襲ってくる疲れのなかで目を閉じる。俗にいう爆睡のモードに堕ちていく。
無理をしていると自分でも思う。しかしそんなフライトが最近増えてきているようにも思うのだ。
夜行をよく使うようになったのは、ソウル経由でバンコクに向かうことが多くなってきてからだ。午前1時半に羽田空港を発つ飛行機に乗ると、午前4時頃、ソウルの仁川国際空港の到着階に出る。いつもの仮眠スペースでしばらく寝る。午前中から午後にかけてソウル市内で用事をすませ、夕方には仁川国際空港に戻る。バンコクに向かう夕方便が待っている。
飛行機のチケットでいうと、トランジット扱いである。トランジットというのは、飛行機の乗り継ぎのことだ。通常は空港内で次の便を待つのだが、その時間を使って市内まで向かう。ソウルを訪ねたような気分のなかで用事をすませる。運賃的にも東京ーソウル、ソウルーバンコクというふたつのフライとを買うより安くなる。
トランジット時間は、その国や空港によって決められている。だいたいが24時間。日をまたぐとトランジットにならないという国や空港もある。うまく使えば、ひとつのフライトで2ヵ国を訪ねる感覚になる。お得感がある。そこにはまっていくと、夜行便に辿りついてしまうのだ。
夜行便を乗りこなしていくコツは、いかにあの狭い機内で寝るかという一点に収れんしてくる。コロナ禍のときは飛行機もすいていて、何席も使って腰をのばして眠ることができたが、最近はそうもいかない。僕はリクライニングを倒すと、どうも腰に負担がかかってしまう。背もたれは倒さず、できるだけ足を前にのばす。前の席の下に足を滑り込ませるような態勢がよく眠れる。それとフードが深いジャンパー。フードをすっぽり被ると、暗くなる。アイマスクと違い、目に圧力がかからない。これはインドの夜行バスで身に着けた。飛行機に乗り込むと、気分は睡眠モードに入っていくから、フードをすっぽり被って目を閉じる。だから機内に流れる安全のためのビデオはほとんど観たことはない。離陸の瞬間も記憶が薄い。
夜行便は離陸しても普通は食事は出ない。飛行機が到着する2時間前ぐらいには起こされて朝食……というパターンだ。僕はスターアライアンスのマイルを貯めているので、食事が出る飛行機に乗ることが多い。
空腹でもないが、オムレツなどの朝食を胃に押し込むように食べ、またフードを被って寝る。
しかしその睡眠は浅く、時間も短い。それがわかっているから、出発前に早めに搭乗口に向かう。隅の椅子で横になる。ときどき熟睡してしまうことがある。航空会社のスタッフに起こされ、周囲を見ると誰もいないことも多い。皆、搭乗してしまっているのだ。申し訳ないと思いながら飛行機に乗り込む。
こんなことを毎回、繰り返している。2週間後にはまた夜行便である。
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2025年05月12日
【新刊プレゼント】シニアになって、旅の空
下川裕治の新刊発売に伴うプレゼントのお知らせです。
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下川裕治 著
シニアになって、旅の空
朝日文庫
◎ 本書の内容
シニアならではの旅の面白さがある。70年代の記憶を手繰り寄せながらの国内旅エッセイ。「青春18きっぷ」でローカル線に乗り、シルバーパスを使ってバスで東京を巡り、著者自身の「二十歳の原点」の地・京都に向かう。バックパッカーのレジェンドとして知られる著者が、70歳になったのを機に自らの旅人生を振り返った一冊。
【目次】
第一章 『青春18きっぷ』で只見線に乗る
第二章 『江戸近郊道しるべ』に憧れて、ただ歩く(ちょっとシルバーパス)
第三章 小樽から新潟、敦賀、そして東京へ
第四章 僕の成田空港物語
第五章 『二十歳の原点』の京都歩き
新刊本『シニアになって、旅の空』 を、
抽選で"3名さま"にプレゼントします!
応募は以下の内容をご記入の上、下記のお問合せフォームよりご連絡ください。応募受付期間は2025年5月23日まで。当選発表は発送をもってかえさせていただきます。
お問合せフォーム
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今すぐほしい!という方は、下記アマゾンから購入可能です。
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【目次】
第一章 『青春18きっぷ』で只見線に乗る
第二章 『江戸近郊道しるべ』に憧れて、ただ歩く(ちょっとシルバーパス)
第三章 小樽から新潟、敦賀、そして東京へ
第四章 僕の成田空港物語
第五章 『二十歳の原点』の京都歩き
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特に応募条件はございません。
タイ在住+日本在住の方も対象ですので、どうぞ奮ってご応募ください。
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2.「お問い合わせ内容」の部分に以下をご記載ください。
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・お電話番号
・ご希望の書名
(念のため記載ください)
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シニアになって、旅の空
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2025年05月12日
京都を描く難しさ
『シニアになって、旅の空』(朝日文庫)が発売になった。前作の『シニアになって、ひとり旅』に続く一作で、旅の舞台は日本だ。「青春18きっぷ」で乗る只見線。小樽から新潟、敦賀、そして徳島から東京へのフェリー旅。江戸時代に江戸の近郊を歩きまわった村尾嘉陵を師と仰ぐようにそのルートを辿って日本橋の浜町から府中の大國魂神社までひたすら歩く旅。そして東成田駅から成田空港までの地下道を歩き、かつて暮らした京都を高野悦子を下敷きに歩く……そんな旅を紹介している。
前作でも乗っているが、僕のなかでは、フェリー旅がちょっとしたブームである。
若い頃からバックパッカー風の旅をつづけてきた。その感性にフェリー旅はフィットするからだ。バックパッカー旅は、基本的に節約旅である。いかに安く旅をつづけるか……そこに収れんされていく旅である。
旅の出費を減らす方法はいくつもある。そのなかでも宿泊代は節約の対象になることが多い。僕が若い頃はインターネットがなかった。いまのように事前にホテルの予約サイトから安い宿を探すことはできなかった。そんななかから安宿街というものが生まれる。バンコクのカオサン、ホーチミンシティのデタム通り、シンガポールのリトルインディアやゲーラン……これらはバックパッカーたちがつくった安宿街である。
宿の価格情報というものを事前に手に入れることができないから、一軒、一軒、宿のフロントで宿泊代を訊いていく。ときに部屋を見せてもらうこともある。これがバックパッカーの宿探し術だった。こういう宿の探し方に応えてくれたのが安宿街だった。バックパッカーがそのエリアに辿り着けばよかった。一軒、一軒、宿代を訊いていくとき、安宿が集まった街はありがたかったのだ。
究極の宿代節約術は、「宿に泊まらない」ことだった。あえて夜行列車やバス、飛行機を選んだものだった。その感性にフェリーがはまった。今回乗った小樽から新潟までのフェリーは、いちばん安いクラスで8500円だった。夕方に小樽港を出港し、翌日の昼前に新潟港に着くスケジュールだった。この料金には1泊の宿代が含まれているわけだから、これは得だった。
日本の列車の世界からは夜行がほぼなくなってしまった。夜行バスはあるが、座席が狭くてかなりきつい。それに比べるとフェリーは快適だった。
フェリーの安いクラスといえば、大部屋での雑魚寝スタイルを想像する人が多い。しかし昨今のフェリーは、カプセルホテルのようなスペースが用意されていることが多い。僕のような旅行者には、これで十分に快適だった。
フェリーにはスペースに余裕があることもありがたかった。夕方に出港すると、デッキに陣どり、海を眺めながらビールを飲んだ。これがフェリー旅の楽しみになっていった。
これからの日本の旅はフェリー……そんな思いが僕のなかにはある。
先日、一冊の新書が送られてきた。知人の仲村清司氏の著作である『日本一ややこしい京都人と沖縄人の腹の内』(光文社刊)だった。彼とは沖縄でつながった。一緒に何冊もの本を書いた。そして沖縄の人々からの批判も一緒に受けた。
彼はいま、京都に暮らしている。京都の家の屋根にある鐘馗さんの話は面白かった。これはある種の魔除けだった。当然、話は沖縄の家の屋根にあるシーサーにつながる。魔除けを屋根に置く京都と沖縄……。なかなか奥深い話である。
僕も『シニアになって、旅の空』で京都を書いていた。僕の京都は高野悦子だった。大学闘争に揺れた京都。そこで自ら命を絶った女子大生である。彼女が残した日記は『二十歳の原点』にまとめられた。僕はそこに描かれた京都に憧れて浪人時代を京都ですごすことになった。仲村氏の京都に比べると、僕の京都は大学闘争ミーハーのような要素があって恥ずかしいが、それが僕の京都である。インバウンドに揺れる京都ではない。
それぞれの京都がある。京都はたしかにややこしい街だが、そこにも等身大の悩みと暮らしがある。そして僕は京都を離れ、仲村氏は沖縄経由で京都に暮らすようになった。共に外様だが、京都を描く難しさを内包している。また京都で仲村氏と酒を飲もうと思う。
■YouTube「下川裕治のアジアチャンネル」
https://www.youtube.com/channel/UCgFhlkMPLhuTJHjpgudQphg
面白そうだったらチャンネル登録を。
■ツイッターは@Shimokawa_Yuji
前作でも乗っているが、僕のなかでは、フェリー旅がちょっとしたブームである。
若い頃からバックパッカー風の旅をつづけてきた。その感性にフェリー旅はフィットするからだ。バックパッカー旅は、基本的に節約旅である。いかに安く旅をつづけるか……そこに収れんされていく旅である。
旅の出費を減らす方法はいくつもある。そのなかでも宿泊代は節約の対象になることが多い。僕が若い頃はインターネットがなかった。いまのように事前にホテルの予約サイトから安い宿を探すことはできなかった。そんななかから安宿街というものが生まれる。バンコクのカオサン、ホーチミンシティのデタム通り、シンガポールのリトルインディアやゲーラン……これらはバックパッカーたちがつくった安宿街である。
宿の価格情報というものを事前に手に入れることができないから、一軒、一軒、宿のフロントで宿泊代を訊いていく。ときに部屋を見せてもらうこともある。これがバックパッカーの宿探し術だった。こういう宿の探し方に応えてくれたのが安宿街だった。バックパッカーがそのエリアに辿り着けばよかった。一軒、一軒、宿代を訊いていくとき、安宿が集まった街はありがたかったのだ。
究極の宿代節約術は、「宿に泊まらない」ことだった。あえて夜行列車やバス、飛行機を選んだものだった。その感性にフェリーがはまった。今回乗った小樽から新潟までのフェリーは、いちばん安いクラスで8500円だった。夕方に小樽港を出港し、翌日の昼前に新潟港に着くスケジュールだった。この料金には1泊の宿代が含まれているわけだから、これは得だった。
日本の列車の世界からは夜行がほぼなくなってしまった。夜行バスはあるが、座席が狭くてかなりきつい。それに比べるとフェリーは快適だった。
フェリーの安いクラスといえば、大部屋での雑魚寝スタイルを想像する人が多い。しかし昨今のフェリーは、カプセルホテルのようなスペースが用意されていることが多い。僕のような旅行者には、これで十分に快適だった。
フェリーにはスペースに余裕があることもありがたかった。夕方に出港すると、デッキに陣どり、海を眺めながらビールを飲んだ。これがフェリー旅の楽しみになっていった。
これからの日本の旅はフェリー……そんな思いが僕のなかにはある。
先日、一冊の新書が送られてきた。知人の仲村清司氏の著作である『日本一ややこしい京都人と沖縄人の腹の内』(光文社刊)だった。彼とは沖縄でつながった。一緒に何冊もの本を書いた。そして沖縄の人々からの批判も一緒に受けた。
彼はいま、京都に暮らしている。京都の家の屋根にある鐘馗さんの話は面白かった。これはある種の魔除けだった。当然、話は沖縄の家の屋根にあるシーサーにつながる。魔除けを屋根に置く京都と沖縄……。なかなか奥深い話である。
僕も『シニアになって、旅の空』で京都を書いていた。僕の京都は高野悦子だった。大学闘争に揺れた京都。そこで自ら命を絶った女子大生である。彼女が残した日記は『二十歳の原点』にまとめられた。僕はそこに描かれた京都に憧れて浪人時代を京都ですごすことになった。仲村氏の京都に比べると、僕の京都は大学闘争ミーハーのような要素があって恥ずかしいが、それが僕の京都である。インバウンドに揺れる京都ではない。
それぞれの京都がある。京都はたしかにややこしい街だが、そこにも等身大の悩みと暮らしがある。そして僕は京都を離れ、仲村氏は沖縄経由で京都に暮らすようになった。共に外様だが、京都を描く難しさを内包している。また京都で仲村氏と酒を飲もうと思う。
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2025年05月05日
ソウルから高松まで5863円
日本にやってくる外国人観光客の増加は、テレビの定番ニュースになりつつある。なんでも2024年には、約3686万人がやってきたという。
海外からのインバウンド客が登場する番組もよく放映される。インタヴューを受ける外国人は、日本のよさを口にし、それを耳にする日本人は、「やっぱり日本はいい国だ」と満足げな顔をつくる。
しかし外国人観光客の本音は少し違う。不愉快な思いもしているはずだ。世界には100%観光客を満足させる国などない。しかしマイクを向けられると、その国への気遣い意識が働いて、悪口はいわない。それは海外に出向いた日本人も同じで、親しい相手でもない限り、その国の欠点をあげつらうようなことはしない。かくして皆がちょっと幸せになる旅番組の構図ができあがる。
しかし、冷静になって考えてみると、日本にやってくる外国人が増えて、いいことがあったかといえば、僕の場合、なにもない。収入が増えたわけでもない。日本語を書く仕事だから、外国人は読者対象ではない。潤っているのは外国人を受け入れるホテルや外国人が多くやってくる飲食店、交通機関、観光地ぐらいだろうか。最終的には日本の景気を押しあげているのかもしれないが、その実感はなにもない。
多くの日本人は、インバウンド客が増えても生活が改善された実感はないと思う。日本への高評価にちょっといい気分になるだけのことだ。
これではなんだか面白くない。インバウンド客が増えて、なにかいいことはないだろうか。
外国人観光客の増加で、日本に乗り入れる飛行機の便数が増えた。成田、羽田、関空といった空港は使用料が高い。利用枠も簡単にはとれない。東京周辺や関西圏は競争も激しいから、勢い、海外の航空会社は、日本の地方空港に乗り入れるようになる。LCCにその傾向が強い。
たとえば韓国のソウルからの便が乗り入れている空港はこれだけある。
高松、北九州、福岡、佐賀、徳島、大阪、鹿児島、米子、松山、静岡、広島、岡山、名古屋、那覇、東京、熊本、札幌、大分、石垣島、長崎、宮崎、旭川、新潟、函館、青森、宮古島、仙台、小松。
28空港になる。台北からも便も28空港。岩手県の花巻にも乗り入れている。
日本の地方都市も、インバウンドの流れをなんとかとり込もうと、海外からの便を地元空港へ誘致しようとしている。これからも乗り入れ空港は増えていくはずだ。
これを使わせてもらうという旅のアイデアが浮かんだ。そう考えたのは、運賃が安いからでもあった。インバウンド便だから現地の人たちが乗る。そう高くはできない。
たとえば6月のソウルー高松の最も安い片道運賃は5863円、米子は8531円。台北路線はやや高いが、台北ー岡山の最も安い片道運賃は1万681円……。
そこでルートを考えてみる。東京ーソウルの旅を、たとえば、東京ーソウルー高松ー東京というルートにする。ソウルの旅に四国の旅を加えてしまうという発想である。高松ー東京の国内線区間の運賃にもよるが、東京とソウルを単純に往復する運賃と比べてもそれほど差はないはずだ。時期によって航空券の運賃は変わるので比較が難しいが、仮に高松に寄るソウルへの旅が、東京ーソウルの単純往復プラス5000円ぐらいならお得感があるように思うのだ。
こう考えると、やっとインバウンド客の増加を日本人も享受できるようにも思う。
旅は想像力の産物だと昔から思っていた。インバウンド客の増加は、旅の想像力を少し刺激してくれた。
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海外からのインバウンド客が登場する番組もよく放映される。インタヴューを受ける外国人は、日本のよさを口にし、それを耳にする日本人は、「やっぱり日本はいい国だ」と満足げな顔をつくる。
しかし外国人観光客の本音は少し違う。不愉快な思いもしているはずだ。世界には100%観光客を満足させる国などない。しかしマイクを向けられると、その国への気遣い意識が働いて、悪口はいわない。それは海外に出向いた日本人も同じで、親しい相手でもない限り、その国の欠点をあげつらうようなことはしない。かくして皆がちょっと幸せになる旅番組の構図ができあがる。
しかし、冷静になって考えてみると、日本にやってくる外国人が増えて、いいことがあったかといえば、僕の場合、なにもない。収入が増えたわけでもない。日本語を書く仕事だから、外国人は読者対象ではない。潤っているのは外国人を受け入れるホテルや外国人が多くやってくる飲食店、交通機関、観光地ぐらいだろうか。最終的には日本の景気を押しあげているのかもしれないが、その実感はなにもない。
多くの日本人は、インバウンド客が増えても生活が改善された実感はないと思う。日本への高評価にちょっといい気分になるだけのことだ。
これではなんだか面白くない。インバウンド客が増えて、なにかいいことはないだろうか。
外国人観光客の増加で、日本に乗り入れる飛行機の便数が増えた。成田、羽田、関空といった空港は使用料が高い。利用枠も簡単にはとれない。東京周辺や関西圏は競争も激しいから、勢い、海外の航空会社は、日本の地方空港に乗り入れるようになる。LCCにその傾向が強い。
たとえば韓国のソウルからの便が乗り入れている空港はこれだけある。
高松、北九州、福岡、佐賀、徳島、大阪、鹿児島、米子、松山、静岡、広島、岡山、名古屋、那覇、東京、熊本、札幌、大分、石垣島、長崎、宮崎、旭川、新潟、函館、青森、宮古島、仙台、小松。
28空港になる。台北からも便も28空港。岩手県の花巻にも乗り入れている。
日本の地方都市も、インバウンドの流れをなんとかとり込もうと、海外からの便を地元空港へ誘致しようとしている。これからも乗り入れ空港は増えていくはずだ。
これを使わせてもらうという旅のアイデアが浮かんだ。そう考えたのは、運賃が安いからでもあった。インバウンド便だから現地の人たちが乗る。そう高くはできない。
たとえば6月のソウルー高松の最も安い片道運賃は5863円、米子は8531円。台北路線はやや高いが、台北ー岡山の最も安い片道運賃は1万681円……。
そこでルートを考えてみる。東京ーソウルの旅を、たとえば、東京ーソウルー高松ー東京というルートにする。ソウルの旅に四国の旅を加えてしまうという発想である。高松ー東京の国内線区間の運賃にもよるが、東京とソウルを単純に往復する運賃と比べてもそれほど差はないはずだ。時期によって航空券の運賃は変わるので比較が難しいが、仮に高松に寄るソウルへの旅が、東京ーソウルの単純往復プラス5000円ぐらいならお得感があるように思うのだ。
こう考えると、やっとインバウンド客の増加を日本人も享受できるようにも思う。
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2025年05月02日
【新刊プレゼント】歩くソウル2025-2026
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下川裕治 (監修)
歩くソウル2025-2026
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◎ 本書の内容
韓国人気のなかで「歩くソウル」が10年ぶりに復活。
明洞、仁寺洞、南大門、東大門、弘大……街歩きに欠かせない詳細マップはバージョンアップ。聖水、益善洞、乙支路3街、ソウルの森……といった人気注目スポットは、詳細イラストマップで紹介しています。
特集は「ソウルではGoogleマップは使い勝手が悪い。ネイバーマップではじまるソウル歩き」。そして「話題のWOWPASSは本当に便利?」など。
1リニューアルされた「歩くソウル」には100本以上の動画を、QRコードを読みとることで観ることができます。店の雰囲気が手にとるようにわかる動画は、店選びの安心アイテムです。
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明洞、仁寺洞、南大門、東大門、弘大……街歩きに欠かせない詳細マップはバージョンアップ。聖水、益善洞、乙支路3街、ソウルの森……といった人気注目スポットは、詳細イラストマップで紹介しています。
特集は「ソウルではGoogleマップは使い勝手が悪い。ネイバーマップではじまるソウル歩き」。そして「話題のWOWPASSは本当に便利?」など。
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特に応募条件はございません。
タイ在住+日本在住の方も対象ですので、どうぞ奮ってご応募ください。
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応募は以下の内容をご記入の上、下記のお問合せフォームよりご連絡ください。応募受付期間は2025年5月18日まで。当選発表は発送をもってかえさせていただきます。

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歩くソウル2025-2026
Posted by 下川裕治 at
13:47
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