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ナムジャイブログ

2018年09月10日

インド列車で染みる優しさ

 インドのガヤから列車でアムリツァル。そこからパキスタンに入り、フンザを経てクンジュラブ峠を越え、いま中国のカシュガルにいる。
 急ぎ旅だった。
 パキスタンのバス網が予想以上にしっかりしていた。ガヤを発ってから1週間でカシュガルに着いた。
 難航したのは、ガヤからアムリツァルまでの列車だった。当日、切符の窓口に行くと、職員は少し悩んだ表情で、別の窓口を伝えた。そこへ行くと、日本の駅でいうと助役の部屋を案内された。つまり満席なのだ。そこでいろいろ調べてもらうと、翌日のデリー行きのエアコン席しか空席がないという。
「急ぐなら、当日切符の窓口に行ってみるのがいいけど」
 再度、当日切符の窓口に行った。別の職員が座っていた。そして、さして迷いもせず、切符を売ってくれた。
 運賃は335ルピー、日本円で約536円。アムリツァルまでは1日以上かかる距離だ。運賃が安すぎる。切符をよく見ると、座席指定がなかった。
「そういうことか……」
 唇を噛んだ。
『鉄路2万7千キロ 世界の「超」長距離列車を乗りつぶす』(新潮文庫)が発売されている。世界の長距離列車の旅をまとめたものだが、その最初の章がインドの列車である。北部のアッサム州からインド最南端まで5日間の旅。200%を超える混雑が続くつらい旅だった。
 そのとき、僕らは2等寝台の予約をとっていた。しかし車内には、予約のない客がひしめいていた。それを仕切るのが車内の車掌だった。空いているベッドに振り分けていくわけだが、200%超えの混雑では、どうしようもない。ひとつのベッドにふたり、そして、床と乗客が頭を捻って寝場所を確保していく。そのなかでは、僕には予約ベッドがあるとはとても主張できなかった。
 しかし予約をもっていると、多少は強く出ることもできた。乗客もそれがわかっているから、できるだけ僕らのスペースをつくってくれた。
 今回はその予約がなかった。混み合う車内で、予約組に遠慮しながら寝ることになる。
 しかしインド人は優しい。少ないスペースを皆で譲り合って、寝場所を確保していく。そこで再び悩んでしまう。インドの列車の2等寝台の予約とは、なんの意味があるのだろうか……と。予約があっても、予約がない人にスペースを譲っていく世界なのだ。予約組にあるのは、若干の優先権だけである。
 こうしてインドの列車は、なにごともなかったかのように走り続ける。インド人は憎めない。インドの列車では優しさが染みる。

■このブログ以外の連載を紹介します。
○クリックディープ旅=玄奘三蔵が辿ったシルクロードの旅。いまは中央アジア編を連載中。
○どこへと訊かれて=人々が通りすぎる世界の空港や駅物。
○東南アジア全鉄道走破の旅=苦戦を強いられている東南アジア「完乗」の旅。インドネシアの列車旅の連載中。
○タビノート=LCCを軸にした世界の飛行機搭乗記


Posted by 下川裕治 at 12:45│Comments(0)
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