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ナムジャイブログ

2019年08月26日

クラウドファンディングの責務

 バングラデシュの小学校を修理するクラウドファンディングをはじめて3ヵ月近くになる。今日(8月25日)時点で204万6508円の援助をいただいた。あと10日でこのクライドファンディングも終了する。目標額は300万円だが、そんなことはいえない感謝が僕のなかでは渦巻いている。
 実をいうと、このクラウドファンディングをはじめる前まで、バングラデシュの学校運営に僕はかなり疲れていた。友人の死がきっかけの援助だった。彼の友達を中心に結成された団体だった。はじめこそ、メンバーの志気は高かった。彼らからの寄付も滞りなく届いた。それから30年である。メンバーの高齢化が進んだ。仕事を引退した人もいれば、病魔に襲われた人もいる。葬儀にも何回かあった。しだいに寄付額が減っていった。そんな僕らの状況をあざ笑うかのようにバングラデシュの物価はあがっていった。僕らは9人の先生の給料を援助していた。スタートした頃は、なんとか暮らすことができる額を援助できたが、しだいに目減りし、アルバイト程度の金額になっていった。寄付を手に、バングラデシュのコックスバザールに行くことがつらくなってきた。先生たちはなにもいわず、ありがとうと受けとってくれるが、内心はわかっていた。この額をもらっても……。
 日本に帰り、行政の助成金の申請書を書きまくった。バングラデシュとは無縁の知人を訪ねていく。知人の心の裡もわかっていた。貧しい子供たちに教育を……といわれると断るわけにはいかない。善意の押し売りの前で戸惑いの表情をつくる。その前で僕は頭をさげ続けた。僕は援助のプロではない。善意の塊のような性格でもない。しかし背後には学校の子供や先生がいた。受けとる金の意味を気にしないようにした。そんなことは関係なかった。自分にそういい聞かせても、10年も続けると、しだいに心は痛んでいく。
 あるときメンバーの前で僕は宣言した。もうやめよう。僕は援助を受けとるために知らない人の前で頭をさげることに疲れていた。しかしメンバーのなかには、僕の意思を無視して、会の口座に送金してくる人がいる。僕はそこに、わずかな自分の資金を加えてバングラデシュに送った。額は以前にもまして少なくなった。
 クラウドファンディングはそんなときにはじまった。予想もしなかった額が振り込まれはじめた。あれだけ寄付集めに苦労したというのに、それをいとも簡単に凌駕していく。
 僕は本を書きているから、インターネットには薄気味悪さを抱いている。勝手に著作権を侵害し、ネット社会に流れる文章のレベルも低いからだ。しかし今回、その威力を見せつけられてしまった。ありがたかった。
 しかし同時に多くの見知らぬ人々への責務を負ったことも痛感している。65歳の男にとって、それはかなり重い。失敗はできない。クラウドファンディングの募集期間が終わったら、僕はそのお金を携えてバングラデシュに行く。経過は報告させていただく。

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■バグラデシュの小学校を修復するクラウドファンディングをはじめています。詳細は、「A-Port バングラデシュ」で検索を。
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Posted by 下川裕治 at 11:46│Comments(1)
この記事へのコメント
愛読者です。少額ながら参加させていただきました。著作が届くのも、再建の進捗も楽しみです。予定通り進まなくてもいいです。来年もクラウドファンドされたら参加させていただきます。
Posted by tkara at 2019年08月27日 00:42
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