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ナムジャイブログ

2022年06月13日

誕生日のラオス列車旅

 いまバンコクにいる。金曜日にラオスから戻ってきた。ラオスが唐突に門を開いた。新型コロナウイルス対策で、堅く門を閉ざしていたのだが、5月、ワクチン接種証明だけで入国が可能になった。ビザもPCR検査もいらない。
 ラオスではラオス中国鉄道に乗ることが目的だった。ヴィエンチャンから中国国境のボーテンまでの422.4キロの鉄道である。昨年の12月に開通した。その先は中国になり、玉渓市まで玉磨線も同じ時期に開通。そこから昆明まではすでに鉄道がある。つまりヴィエンチャンから昆明までの鉄道が開通したわけだ。いまは中国が国境を閉じているが。
 この鉄道の開通で、シンガポールからマレーシア、タイ、ラオス、中国、ロシアを経てポルトガルまで世界最長の鉄道がつながったことになる。
 いまは新型コロナウイルスやウクライナ問題が障壁になっているが、いつか乗ってみたいとは思っている。その予行練習? そんな意味合いもあった。今回はヴィエンチャンからルアンパバーンまで乗ってみた。
 そこで味わった感覚……。この鉄道はあまりに中国だった。中国そのものといってもいい。駅舎は巨大で、鉄道は国家の権威という中国の発想が伝わってくる。大きな駅名表示はラオス語と中国語だけで英語はない。乗った列車は、中国の硬座車両だった。中国からもち込んだわけだ。
 しかし画期的な路線である。これまでヴィエンチャンからルアンパバーンまではバスでひと晩かかっていたが、わずか2時間半。早い列車なら2時間で着いてしまう。途中のヴァンヴィエンからルアンパバーンまでは本当にトンネルが多い。よくこれだけの鉄道を建設したものだと思う。
 もうわかっていると思うが、この鉄道は中国が建設した。一帯一路である。中国の腹づもりは旅客よりも貨物輸送にある気がする。ラオスの南につづくタイ、カンボジア、マレーシア、シンガポールに中国の物資を運び入れるルートである。
 そこにはラオスという小国の危うい綱渡りがある。「債務の罠」である。総工費は6700億円といわれ、その3割をラオスが負担したが、大半は中国からの借り入れなのだ。
 しかし乗客のラオス人の目は輝いている。ラオス初の本格的な鉄道である。それが中国人すら敬遠する硬座車両であっても、ルアンパバーンまで2時間ほどで着いてしまう。
 ルアンパバーンでは仏教の街である。そこで朝の托鉢を見たが、僧侶は食事を受けとる一方で、道沿いに並ぶ貧しい男や子供たちに菓子などを与えていた。
 外国人観光客が頼りだったルアンパバーンは、新型コロナウイルスで多くの失業者が出た。彼らを托鉢僧が支えるという構図を僕は描いてしまった。しかしどうも違うらしい。ルアンパバーンに暮らす方に訊いたところ、以前から僧侶は菓子などを子供に与えていたという。
「三輪空寂の仏教思想では」
 と教えられた。三輪はお布施を与えたり受けとったりする人や物のこと。空寂とは世界は空であるという仏教用語だ。つまり物をあげたり、もらったり、そして物への執着を止める思想である。
 そう思うと中国の一帯一路はあまりに無粋だ。欲の塊でもある。
 列車に乗った日は僕の誕生日だった。意図したわけではないが、68歳になった。
 シンガポールからポルトガルまでの長い列車旅を、僕の最後の長旅にしようかという思いはある。そんな旅の予行演習で出合ってしまった「三輪空寂」。ラオスがまた好きになった。

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Posted by 下川裕治 at 12:57│Comments(0)
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