2011年09月12日
カオムーデーンが5バーツ値上がりした
バンコクの常宿だったソイ・アーリーのマイハウスホテルが閉鎖になり、もう2年近くになる。それからはバンコクのホテル放浪が続いている。
最初に泊まっていたのは、サパーンクワイのエンバシーホテルだった。マイハウスホテルから紹介されたホテルである。マイハウスホテル同様、築30年を超えるホテルだった。そのホテルに泊まってわかったのだが、マイハウスホテルの従業員が5人も移っていた。僕はホテルの従業員もろとも移ったことになる。
サパーンクワイでは懐かしい人にも会った。
ソイ・アーリーで毎朝買っていたバートンコー屋だった。彼は僕らよりひと足先にサパーンクワイに移っていたのだ。
ソイ・アーリーが年を追って高級な街になっていった。コンドミニアムが建ち、おしゃれなカフェがオープンしていく。パホンヨーティン通りの反対側にはビラスーパーもできた。マイハウスホテルも値上がりする土地代のなかで、コンドミニアムになるという話だった。ソイ・アーリーの庶民には、ついていけない街に変貌しつつあったのだろう。
そして僕もソイ・アーリーから追い出された。それはしかたのないバンコクの発展でもあった。どことなく鼻白む思いで、僕はサパーンクワイに根城を移していった。
しかしその後のソイ・アーリーが気になっていた。駅前の商店街にシートが張られ、再開発がはじまってしまったのだ。
「ますます近づけない街になる……」
BTSの車窓から、ソイ・アーリーの工事を見つめていた。
そのシートがはずされた。工事が終わったようだった。なにか怖いものでも見るような思いで、ソイ・アーリーの駅で降りてみた。まだ工事の途中だったが、通りに面した店はすでに営業をはじめていた。歩道を歩くと、すぐに写真屋が目に入った。以前からあった写真屋である。店はこぎれいになったが、店のおじさんはちゃんといる。ソイの入り口にあっためがね屋もそのままだった。その先に八百屋……あった。店はきれいになったが、無愛想だが正直値段で売ってくれるおばちゃんがいる。懐かしい顔に次々に出会い、笑顔が返ってくる。そう、この街には20年以上もお世話になったのだ。
小さなソイの角に出た。カオムーデーンやクイッティオの食堂がない。よくテーブルに座った店だった。化粧品や靴を置いたおしゃれな店になっている。歩道に沿ってしばらく歩く。
「あった」
食堂があったのだ。店は小さくなったが、小太りのおばちゃんが動きまわっている。懐かしくてつい入ってしまった。
「こっちに移ったんだ」
「角は家賃が高いからね。いろいろ入れ替えや移転があったんだよ。皆、家賃と相談しながら。定食屋は引退。でも6割ぐらいは残ったさ。この街は儲かるからね」
店はきれいになったが、そんなに高級になったわけではない。どこか郊外にできた新しい商店街といった趣だ。しかしどの店は冷房が効くようになった。そしてカオムーデーンは5バーツ値上がりした。
最初に泊まっていたのは、サパーンクワイのエンバシーホテルだった。マイハウスホテルから紹介されたホテルである。マイハウスホテル同様、築30年を超えるホテルだった。そのホテルに泊まってわかったのだが、マイハウスホテルの従業員が5人も移っていた。僕はホテルの従業員もろとも移ったことになる。
サパーンクワイでは懐かしい人にも会った。
ソイ・アーリーで毎朝買っていたバートンコー屋だった。彼は僕らよりひと足先にサパーンクワイに移っていたのだ。
ソイ・アーリーが年を追って高級な街になっていった。コンドミニアムが建ち、おしゃれなカフェがオープンしていく。パホンヨーティン通りの反対側にはビラスーパーもできた。マイハウスホテルも値上がりする土地代のなかで、コンドミニアムになるという話だった。ソイ・アーリーの庶民には、ついていけない街に変貌しつつあったのだろう。
そして僕もソイ・アーリーから追い出された。それはしかたのないバンコクの発展でもあった。どことなく鼻白む思いで、僕はサパーンクワイに根城を移していった。
しかしその後のソイ・アーリーが気になっていた。駅前の商店街にシートが張られ、再開発がはじまってしまったのだ。
「ますます近づけない街になる……」
BTSの車窓から、ソイ・アーリーの工事を見つめていた。
そのシートがはずされた。工事が終わったようだった。なにか怖いものでも見るような思いで、ソイ・アーリーの駅で降りてみた。まだ工事の途中だったが、通りに面した店はすでに営業をはじめていた。歩道を歩くと、すぐに写真屋が目に入った。以前からあった写真屋である。店はこぎれいになったが、店のおじさんはちゃんといる。ソイの入り口にあっためがね屋もそのままだった。その先に八百屋……あった。店はきれいになったが、無愛想だが正直値段で売ってくれるおばちゃんがいる。懐かしい顔に次々に出会い、笑顔が返ってくる。そう、この街には20年以上もお世話になったのだ。
小さなソイの角に出た。カオムーデーンやクイッティオの食堂がない。よくテーブルに座った店だった。化粧品や靴を置いたおしゃれな店になっている。歩道に沿ってしばらく歩く。
「あった」
食堂があったのだ。店は小さくなったが、小太りのおばちゃんが動きまわっている。懐かしくてつい入ってしまった。
「こっちに移ったんだ」
「角は家賃が高いからね。いろいろ入れ替えや移転があったんだよ。皆、家賃と相談しながら。定食屋は引退。でも6割ぐらいは残ったさ。この街は儲かるからね」
店はきれいになったが、そんなに高級になったわけではない。どこか郊外にできた新しい商店街といった趣だ。しかしどの店は冷房が効くようになった。そしてカオムーデーンは5バーツ値上がりした。
Posted by 下川裕治 at 14:02│Comments(0)
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