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ナムジャイブログ

2012年02月06日

マイナス10度のケバブ

 どうしてこんなに寒いんだろう。昨日の最低気温はマイナス19度、最高気温はマイナス10度と表示されていた。
 細かい結晶のような雪が舞う。日本の新潟に降るそれとは違う、寒冷地の雪だ。
 この街にはこれまで、3回滞在している。なぜかいつも夏だった。気温は40度を超えたときもあった。ときおり、熱風が嵐のようにこの街を襲った。暑さの記憶しかない。
 しかしいま、マイナス10度を下まわる気温に包まれている。
 中国のウルムチにいる。
 目的地はこの街ではなかった。ウルムチから列車に6時間ほど乗り、そこから200キロほどのところに星星峡という街がある。中国語でシンシンシャという。その音の響きにも誘われたが、昔から、この街の説明が気になっていた。
「中国西北地区西部に位置する街。極めて荒涼とした光景が広がり、そこから先は果てしない異国といわれている。北緯41度49分東経95度17分」
 行ってみようか……。
 人は酔狂な旅と思うかもしれないが、その光景を見てみたかった。
 星星峡の周辺は、たしかに荒涼とした風景だった。鋭い岩山に囲まれていた。その地名通り、夜には満天の星空が広がっていた。
 東に100キロほど行くと敦煌がある。この街が栄えていた時代、星星峡から西は異国だったのだろう。砂漠が続く果てしない異国だったのだ。
 昔と同じように、いまもここに境界が引かれている。甘粛省と新疆ウイグル自治区の境界である。
 しかしいまは高速道路が、この星星峡を貫いていた。高速道路の料金所がある街にすぎなかった。トラック運転手向けの食堂と車の修理屋が街道に沿って並んでいた。
 この先は異国というのは、漢民族の発想である。そこにはウイグル系の人々が暮らす一帯があった。そしていま、漢民族はその異国に我が物顔で暮らしている。
 ウルムチの人口の大多数は漢民族なのである。暑い時期と寒い時期の温度差が60度にもなる厳しい気候をものともせず、漢民族はウルムチに高層ビルを建て、巨大な工場を建設していった。いまの中国では、最も景気がいい街のひとつといわれている。
 好景気に吸いつけられるように、次々と漢民族がこの街にやってくる。
 当然、ウイグル人との軋轢もあるのだが、いまの漢民族には、それを蹴散らしてしまうパワーがある。
 ウイグル人たちは、この寒さのなか、路上でケバブを焼くしかない。



Posted by 下川裕治 at 12:00│Comments(1)
この記事へのコメント
今年の日本は久方ぶりに寒いけど、そんな生半可なものじゃないですね。気をつけて!
Posted by 山澤 at 2012年02月08日 13:34
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