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ナムジャイブログ

2015年07月06日

風のなかの沖縄野球

 那覇のセルラースタジアム。高校野球の予選を観ながら、風について考えていた。球場のネット裏に座っていると、いつも心地いい風が吹いてくる。いまの沖縄は、1年のなかでもいちばん暑い時期なのだが、その熱気を風が快感に変えてくれる。
 沖縄は風の島だと昔から思っている。いつも風が吹いている島だ。ときにその風は猛威をふるうが、台風さえこなければ、沖縄の夏は心地いい。風があるからだ。もっとも、高校球児の外野手は大変である。あがったフライは、ときに風に煽られ、不規則に揺れる。
 毎年、この時期、沖縄で夏の甲子園の予選を観ることにしている。退院して1週間もたっていないから、若干の心配はあった。しかし天気予報を見ると、来週は台風がやってきそうだった。沖縄行きのLCCに乗ってしまった。那覇市内のいつもの宿に泊まった。朝、うるさいほどのセミの声で目を覚ました。沖縄は夏の真っただなかだった。
 朝から野球を観戦し、昼どき、球場の外に出た。どこかでおにぎりでも買おうと思ったのだ。
 沖縄には高校野球ファンが多い。予選も2回戦だというのに、球場はかなりの観客で埋まってしまう。近くのコンビニは品切れで、しばらく街のなかを歩いた。
 暑かった。
 汗がシャツを濡らす。
 球場のなかにいたときは、吹き抜ける風が汗を乾かしてくれた。しかし、街に出ると、その風がなかった。
 沖縄の夏の暑さが、急に不快になった。
 セルラースタジアムは、両翼が100メートルの広さがある。これだけのスペースをつくっただけで、風が抜ける。高校野球連盟の旗がはためき、白球が揺れ、観客は暑さを忘れて野球を観ることができる。日射しは強いから、いくら日陰にいても照り返しで日焼けしてしまうのだが、それを気づかせない風の威力がある。
 ところが家やビルが密集すると、その風の恩恵が消えてしまうのだ。
 僕は東南アジアの暑いエリアに行くことが多い。いまはエアコンがだいぶ普及してきたが、風だけが頼りだった時代を知っている。暑い午後も、風が吹き抜ける日陰がみつかれば大丈夫だった。夜は風さえあれば、心地よく寝ることができた。
 風は体感できるが目に見えない。川の水の汚れのような話題にもなりにくい。空気の汚れは、さまざまな病気の誘因になるが、風が吹くということへの評価は高くない。しかしそのなかで、人は風がもたらす快適さを失ってきたような気がする。
 目の前の試合は白熱していた。那覇商業と沖縄尚学の試合は延長戦になった。外野にフライがあがると、スタンドがどよめく。風のなかで試合は進んでいった。

  

Posted by 下川裕治 at 13:24Comments(0)