2011年08月01日
とんかつを食べる人々
タイ人が大好きな日本料理……それは寿司でもすき焼きでもなく、とんかつではないかと思うことがある。
バンコクにあるタイ人向けの日本食レストランは、数え切れないほどだ。チェーン店も多い。先日、バンコクのラーマ4世通りに近いソイで、オープンエアーの食堂の前にいた。タイ料理もあるが、日本料理もメニューにある。昼どきで、近くで働くサラリーマンやOLで混みあっていた。
店頭にメニューが出ていた。昼食の日本料理はセットになっているようで、4品の写真が掲げてあった。メインの料理はあるのだが、そのすべてに小ぶりのとんかつがついていた。
FUJIとかYAYOIといったタイ人向けチェーン店のメニューにも、とんかつは売れ筋のように紹介されている。
一度、FUJIで「とんかつそば」というものを食べたことがある。日本のそばの上にとんかつが載っているのだ。そばには「つゆ」があるわけで、どうして沈まないのだろう、とメニューの写真に首を傾げながら注文した。
出てきた「とんかつそば」のとんかつは、深く「つゆ」に浸っていた。
たっぷりと「つゆ」を吸い込み、濡れそぼり、ポタポタと「つゆ」が垂れるとんかつは、カラッと揚げられて出てくるという、「とんかつの固定概念」をみごとに打ち砕いてくれた。
とんかつが好きというわけではない。だが、子供の頃はときどき我が家の食卓に上った。父は高校の教師だったが、野球部の監督や部長を務めていた。試合の前日の夕飯は、必ずとんかつだった。試合に勝つために、母はいつもとんかつを揚げた。父の指導するチームはそれほど強くなかったので、春や夏の大会でも、1、2回のとんかつで終わってしまうことも多かったが。
一度、沖縄の宮古島で、「大衆食堂」という店名の大衆食堂に入ったことがある。「そば」とメニューに書かれた宮古そばを頼んだ。ひとりで切り盛るオバァは、厨房に立っているのだが、なかなか「そば」が出てこない。
20分ほど待っただろうか。やっと出てきた「そば」はお盆に載せられていたが、脇には、とんかつとヤクルトが添えられていた。
「ここは客が着てから揚げるから時間がかかるさー。でも、揚げたてだからおいしいよ」
「とんかつなんて頼んでないけど。それにヤクルトも」
「心配ないよ。これはサービスだからさー」
沖縄の人もとんかつが大好きだった。
40~50代の沖縄の人に聞くと、子供の頃、とんかつの記憶が曖昧だ。おそらく本土の料理だったとんかつが、沖縄に広まっていく時期だったのだろう。
いまのタイがその時期かもしれない。
タイ人と沖縄の人々は、食の嗜好がどこか似ている。
しかしタイ人は、日本料理は油が少なく太らないと信じている。で、とんかつ……?。見ればわかりそうなものなのだが。
バンコクにあるタイ人向けの日本食レストランは、数え切れないほどだ。チェーン店も多い。先日、バンコクのラーマ4世通りに近いソイで、オープンエアーの食堂の前にいた。タイ料理もあるが、日本料理もメニューにある。昼どきで、近くで働くサラリーマンやOLで混みあっていた。
店頭にメニューが出ていた。昼食の日本料理はセットになっているようで、4品の写真が掲げてあった。メインの料理はあるのだが、そのすべてに小ぶりのとんかつがついていた。
FUJIとかYAYOIといったタイ人向けチェーン店のメニューにも、とんかつは売れ筋のように紹介されている。
一度、FUJIで「とんかつそば」というものを食べたことがある。日本のそばの上にとんかつが載っているのだ。そばには「つゆ」があるわけで、どうして沈まないのだろう、とメニューの写真に首を傾げながら注文した。
出てきた「とんかつそば」のとんかつは、深く「つゆ」に浸っていた。
たっぷりと「つゆ」を吸い込み、濡れそぼり、ポタポタと「つゆ」が垂れるとんかつは、カラッと揚げられて出てくるという、「とんかつの固定概念」をみごとに打ち砕いてくれた。
とんかつが好きというわけではない。だが、子供の頃はときどき我が家の食卓に上った。父は高校の教師だったが、野球部の監督や部長を務めていた。試合の前日の夕飯は、必ずとんかつだった。試合に勝つために、母はいつもとんかつを揚げた。父の指導するチームはそれほど強くなかったので、春や夏の大会でも、1、2回のとんかつで終わってしまうことも多かったが。
一度、沖縄の宮古島で、「大衆食堂」という店名の大衆食堂に入ったことがある。「そば」とメニューに書かれた宮古そばを頼んだ。ひとりで切り盛るオバァは、厨房に立っているのだが、なかなか「そば」が出てこない。
20分ほど待っただろうか。やっと出てきた「そば」はお盆に載せられていたが、脇には、とんかつとヤクルトが添えられていた。
「ここは客が着てから揚げるから時間がかかるさー。でも、揚げたてだからおいしいよ」
「とんかつなんて頼んでないけど。それにヤクルトも」
「心配ないよ。これはサービスだからさー」
沖縄の人もとんかつが大好きだった。
40~50代の沖縄の人に聞くと、子供の頃、とんかつの記憶が曖昧だ。おそらく本土の料理だったとんかつが、沖縄に広まっていく時期だったのだろう。
いまのタイがその時期かもしれない。
タイ人と沖縄の人々は、食の嗜好がどこか似ている。
しかしタイ人は、日本料理は油が少なく太らないと信じている。で、とんかつ……?。見ればわかりそうなものなのだが。
Posted by 下川裕治 at
19:27
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