2013年06月10日
バンコクに荷物は届かなかった
バンコクにいる。
宿にこもって原稿に追われている。
バンコクへは、北京経由の中国国際航空を利用した。最近の日本―バンコク線は混み合っている。直行便の安いクラスは、早々に埋まってしまう。経由便ということになることが多い。
バンコクのスワンナプーム空港で預けた荷物を待っていた。ターンテーブルにはまだ荷物が残っていたが、職員に声をかけられた。荷物が出てこないことを知らされた。ロストバッゲージである。北京からバンコクに向かう便に、僕の荷物は乗っていなかったのだ。
2年に1回ぐらいの割合で、ロストバッゲージの憂き目に遭う。荷物がないまま、バンコクの宿に入り、知人にそういった。
「私なんか、これまで1回も荷物が出てこなかったことはありませんよ」
僕はそういう星のもとに生まれた旅行者なのだろうか。
予感はあった。成田空港の出発が1時間遅れた。乗客が乗り込んでから、北京空港の天候不良が原因で遅れることが伝えられ、成田空港の片隅に飛行機は移動し、機内で待つことになった。予定では北京空港での乗り換え時間は1時間半である。それが30分になる。乗り換えがうまくいくだろうか。不安を抱えて北京に向かった。
北京空港では職員に急かされ、なんとか乗り継いだ。荷物が気になったが、移し換えるのは北京空港の職員だから、僕はどうすることもできない。はたして30分で積み換えられたのだろうか。
ところが出発が2時間遅れた。例によって機内に乗り込んでから伝えられた。これだけ時間があれば大丈夫だろうか。
しかし荷物はバンコクに届かなかった。
航空会社はわかっていた気がする。30分での積み換えは、北京空港では無理なのだ。しかしそれを乗客に伝えるわけにもいかない。
同じようなことが数年前にあった。グルジアのトビリシから、ウクライナのキエフ経由でパリに向かった。ウクライナ・インターナショナルという航空会社だった。キエフでの乗り換え時間は1時間だった。
パリには僕の荷物は届かなかった。
「乗り換え時間はどのくらい?」
職員に訊かれた。
「1時間」
そう答えると、諸君は意味ありげな表情を浮かべた。キエフ空港では、1時間で荷物を積み換えるのは難しいと、荷物を届ける会社の担当者から知らされた。毎日のようにロストバッゲージがあるのだという。
北京からの荷物は、翌日、宿に届いた。正確にいうと、翌々日の午前1時。それまで同じものを着て過ごした。
「下川さん、そういうときは、航空会社にがんがんいわないとダメですよ。洗面道具とかをくれたり、買った衣類代を負担してくれることもあるって聞いたことがあります」
バンコクに住む知人からいわれた。中国国際航空が? 僕はその種の飛行機ばかり乗っている気がする。航空会社への期待のレベルが低いらしい。ちょっと切なかった。
(お知らせ)
朝日新聞のサイト「どらく」連載のクリックディープ旅が移転しました。「アジアの日本人町歩きの旅」。アクセスは以下。
http://www.asahi.com/and_M/clickdeep_list.html
宿にこもって原稿に追われている。
バンコクへは、北京経由の中国国際航空を利用した。最近の日本―バンコク線は混み合っている。直行便の安いクラスは、早々に埋まってしまう。経由便ということになることが多い。
バンコクのスワンナプーム空港で預けた荷物を待っていた。ターンテーブルにはまだ荷物が残っていたが、職員に声をかけられた。荷物が出てこないことを知らされた。ロストバッゲージである。北京からバンコクに向かう便に、僕の荷物は乗っていなかったのだ。
2年に1回ぐらいの割合で、ロストバッゲージの憂き目に遭う。荷物がないまま、バンコクの宿に入り、知人にそういった。
「私なんか、これまで1回も荷物が出てこなかったことはありませんよ」
僕はそういう星のもとに生まれた旅行者なのだろうか。
予感はあった。成田空港の出発が1時間遅れた。乗客が乗り込んでから、北京空港の天候不良が原因で遅れることが伝えられ、成田空港の片隅に飛行機は移動し、機内で待つことになった。予定では北京空港での乗り換え時間は1時間半である。それが30分になる。乗り換えがうまくいくだろうか。不安を抱えて北京に向かった。
北京空港では職員に急かされ、なんとか乗り継いだ。荷物が気になったが、移し換えるのは北京空港の職員だから、僕はどうすることもできない。はたして30分で積み換えられたのだろうか。
ところが出発が2時間遅れた。例によって機内に乗り込んでから伝えられた。これだけ時間があれば大丈夫だろうか。
しかし荷物はバンコクに届かなかった。
航空会社はわかっていた気がする。30分での積み換えは、北京空港では無理なのだ。しかしそれを乗客に伝えるわけにもいかない。
同じようなことが数年前にあった。グルジアのトビリシから、ウクライナのキエフ経由でパリに向かった。ウクライナ・インターナショナルという航空会社だった。キエフでの乗り換え時間は1時間だった。
パリには僕の荷物は届かなかった。
「乗り換え時間はどのくらい?」
職員に訊かれた。
「1時間」
そう答えると、諸君は意味ありげな表情を浮かべた。キエフ空港では、1時間で荷物を積み換えるのは難しいと、荷物を届ける会社の担当者から知らされた。毎日のようにロストバッゲージがあるのだという。
北京からの荷物は、翌日、宿に届いた。正確にいうと、翌々日の午前1時。それまで同じものを着て過ごした。
「下川さん、そういうときは、航空会社にがんがんいわないとダメですよ。洗面道具とかをくれたり、買った衣類代を負担してくれることもあるって聞いたことがあります」
バンコクに住む知人からいわれた。中国国際航空が? 僕はその種の飛行機ばかり乗っている気がする。航空会社への期待のレベルが低いらしい。ちょっと切なかった。
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Posted by 下川裕治 at 15:51│Comments(0)
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