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ナムジャイブログ

2014年04月29日

朝靄のなかから巨大発電所が現れた

【通常のブログはしばらく休載。『裏国境を越えて東南アジア大周遊編』を連載します】
【前号まで】
 裏国境を越えてアジアを大周遊。スタートはバンコク。カンボジア、ベトナムを北上。ディエンビエンフーからラオスに入国し、ルアンパバーン、サラブリを経てホンサー。タイに向かう
     ※       ※
 早朝のホンサー。タイ国境に向かうバンが停まった。運転手は携帯電話で連絡をとりあっている。しだいに朝靄が晴れてきた。そして目の前に屹立する巨大な煙突に、僕は言葉を失っていた。
「発電所……」
 大きかった。外周は200~300メートルはあるだろうか。高さは数十メートルの円柱だった。上に向かうにつれ、少し円周は小さくなっている。
 これまでもこの種の巨大煙突を何回もみてきた。中国の上海近郊、アメリカの東海岸、ロシア……。それはどこも、海岸に近い工業地帯だった。それならわかる。しかし、ここはラオスだった。
 首都のビエンチャンの近くに、こんな発電所ができると聞いたら、「もう、そんな時代なんだな」と自分を納得させることはできたかもしれない。しかしホンサーは、海から遠く離れ、メコン川と深い山に囲まれた盆地なのだ。人口も少ないだろう。人々はまだ、川で洗濯をしている世界なのだ。
 そこになぜ、これほど巨大な発電所が建設されているのだろうか。
 つくっているのは中国だった。ホンサーの郊外には、8軒ほどの中国料理店が並んでいた。小屋がけのつくりだが、一軒は100人以上が座ることができる規模である。発電所建設に汗を流す中国人がここで食事をとるのだろう。
 それは怖れを内包した違和感だった。メコン川の支流では、NGOがつくった水車式の発電に、村人が目を輝かせている。そこになぜこれほどの発電所が……。
 この発電所にどうやって燃料を運び込むのだろうか。メコン川にかかった橋の意味を教えられた気がした。
 車は南西に向かって進んだ。いくつかの峠を越え、ムアンガンという小さな町の市場に着いた。そこで少し休み、タイとの国境に向かう。ここからはそう遠くない。
 不安があった。この国境を外国人が通過できる……という確証がなかった。
 事前にラオスに住む日本人の知人に訊いていた。彼はこういった。
「あの国境、外国人も通ることができるんですか?」
 そう聞かれても困るのである。
 もし、通過できなかったら、ルアンパバーンに戻るか、フエサイに向かわなくてはならなくなる。
 前方にラオスの国旗が見えてきた。そこがラオスの出入国管理事務所のようだった。ここで出国スタンプを捺してくれれば、タイに抜けることができる可能性が高かった。もしだめなら、「タイには行けない」と職員がいってくれるはずだった。
 イミグレーションの窓口にそっとパスポートを出してみる。
 職員はぱらぱらとパスポートをめくりはじめた。ラオスの入国スタンプを探しているようだった。(以下次号)

(写真やルートはこちら)
この旅の写真やルート地図は、以下をクリック。
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「裏国境を越えて東南アジア大周遊」を。こちらは2週間に1度の更新です。



Posted by 下川裕治 at 15:53│Comments(0)
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