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ナムジャイブログ

2016年02月22日

カンタン駅にて

 タイの駅が好きだ。
 昔からそう思っていた。バンコクの中央駅であるフアラムポーンを気にいっているという意味ではない。
 地方の田舎駅──。
 そこでベンチに座り、列車を待っている時間が好きだ。
 東南アジアの全鉄道路線に乗るという取材を続けている。これまでもアジアで鉄道に乗る機会が多く、出版社の編集者に、「8割がた乗っているんです」と口にしたことがきっかけだった。「じゃあ、もう少しじゃないですか」と話はとんとんと進んでしまったのだが、いざ、はじめてみると、全路線に乗るということが、どれほど大変なことかわかってきた。幹線ではなく、そこから延びる短い支線ばかりが残ってしまっている。その路線に乗るために、延々と列車に揺られなくてはならない。いったいいつ終わるかわからない取材であることがわかってしまった。
 いま、タイのナコンシータマラート。
 昨日、カンタンからトゥンソンまでの区間に乗った。カンタン支線と呼ばれる54キロほどの路線だ。
 始発のカンタン駅は1日に1本の列車しかない。
 いい駅だった。駅舎はやや濃い黄色に塗られている。駅は掃除が行き届き、駅舎の前には、南国の花々が咲いている。かつては貨物の扱いが多かったようで、大きな秤がいくつも置かれている。レトロな雰囲気が駅舎を包んでいる。
 ホームには、木製のベンチとプミポン国王の写真。ホームの端にあるトイレも清潔で、水洗だった。
 タイの鉄道駅はバスターミナルに比べ、数段、清潔である。運行する本数も少なく利用客も少ないが、鉄道員は、駅舎を清潔に保っている。
 この駅には駅長以下6人の駅員がいた。1日に1便しかない駅にこれだけの人数。タイ国鉄が大きな赤字を抱えることは無理のないことだと思うが、旧態依然とした世界が、駅の清潔さを保っていることも事実だった。駅員には掃除ぐらいしかやることがないといったら、彼らはなんと答えるだろうか。しかしこんな駅員の仕事にちょっと憧れてしまう。
 駅に流れる空気は、古きよきタイということだろうか。急ぎ旅には向かない世界だが、老朽化した車両を洗い、レトロな駅の床を掃き、花に水をまいて、タイの鉄道は保たれている。
「どうしてこの駅は黄色に塗られているんですか?」
 暇そうにしている駅員に訊いてみた。
「駅ができたときから黄色だった」
 タイ人らしい答えが返ってきた。



Posted by 下川裕治 at 15:01│Comments(2)
この記事へのコメント
いやあうらやましい旅です。
また数ヶ月すると東南アジア鉄道完乗の本を出していただけるのでしょうか。必ず買います。シンガポールの本も,いつもの下川先生節で楽しませていただきました!
Posted by naoki at 2016年02月22日 15:12
タイの地方駅に行くと
駅も質素で周りには何もない所が急にあったりします。
夜にそんなところで降りたらどうなっちゃうんだろうなどと思いながら窓を開けて空を見上げると
何もないが故に星の光が強く輝いているのが見えます。
下川さんの鉄道旅行の旅、早く読みたいです。
気になる駅に実際に行ってみたいです。
そんな駅で荷物を10バーツで預けて近くを散策したいです。
でも一日一本だとそれはできないですけどね。
鉄道・・・タイに行って好きになりました。日本ではそんなでもなかったのですが。
Posted by たぬきまるだいすけ at 2016年03月16日 06:12
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