2016年05月09日
痛みと鬱の間
最近、80歳を超える母につきあって、ペインクリニックを訪ねている。母は、足の痛みを訴えている。長く治療を受けているが、目立った効果はない。俗にいう神経痛という部類に入るのだろうが、ひょっとしたら、という思いでペインクリニックに通うことにした。
医師といろいろ話すのだが、痛みというものの奥深さにいつも考えさせられる。
例えば、腰と脚に痛みの原因が生まれても、どちらかの痛みしか感じないということがある。一つの痛みを手術で治すと、隠れていた痛みが表に出てくることもある。背骨の湾曲で神経を圧迫していても、ある人は痛みを感じるが、まったく痛みがない人もいる。
老人の場合は、痛みに寄り添いたい心理も生まれる。痛みがあれば、誰かが面倒をみてくれる。だから痛くなる……。
痛みを根本的に治すには、筋肉をつけていくしかないらしい。頑張って歩くことを説かれる。周囲もできるだけ歩くようにいうのだが、それが心の負担になっていく。クリニックの受付で、「今日は頑張って歩いて帰ります」といった老人が、1階の薬局でタクシーを呼んでいたりする。心では頑張ろうとするのだが、やはり痛い。
痛みの治療──。その話を医師としていると鬱の治療に近いことがわかってくる。実際、抗鬱剤が処方されることは珍しくない。それどころか、鬱の患者もペインクリニックに通ってきている。治療の手法がきっと似ているのだろう。いや、鬱というものは、ときに痛みを伴う。
痛みが発生していても、それを痛みと認識しない……。それは病理なのだろうか。それとも心理? よくはわからない。その境界線上で痛みは生まれる。
幸い、母はこれからも通院するつもりになっている。
■このブログ以外の連載を紹介します。
○ユーラシア大陸最南端から北極圏の最北端駅への列車旅は、ロシアに入国。
http://www.asahi.com/and_M/clickdeep_list.html
○人々が通りすぎる世界の空港や駅物語。2回目はドンムアン空港。
http://dot.asahi.com/dot/2016042600040.htmlどこへと訊かれて/
○苦戦を強いられている東南アジア「完乗」の旅。いまはタイ南部をうろうろしてます。
http://tabilista.com/cat/se-asia/
○LCCを軸にした世界の飛行機搭乗記は
http://tabinote.jp/
医師といろいろ話すのだが、痛みというものの奥深さにいつも考えさせられる。
例えば、腰と脚に痛みの原因が生まれても、どちらかの痛みしか感じないということがある。一つの痛みを手術で治すと、隠れていた痛みが表に出てくることもある。背骨の湾曲で神経を圧迫していても、ある人は痛みを感じるが、まったく痛みがない人もいる。
老人の場合は、痛みに寄り添いたい心理も生まれる。痛みがあれば、誰かが面倒をみてくれる。だから痛くなる……。
痛みを根本的に治すには、筋肉をつけていくしかないらしい。頑張って歩くことを説かれる。周囲もできるだけ歩くようにいうのだが、それが心の負担になっていく。クリニックの受付で、「今日は頑張って歩いて帰ります」といった老人が、1階の薬局でタクシーを呼んでいたりする。心では頑張ろうとするのだが、やはり痛い。
痛みの治療──。その話を医師としていると鬱の治療に近いことがわかってくる。実際、抗鬱剤が処方されることは珍しくない。それどころか、鬱の患者もペインクリニックに通ってきている。治療の手法がきっと似ているのだろう。いや、鬱というものは、ときに痛みを伴う。
痛みが発生していても、それを痛みと認識しない……。それは病理なのだろうか。それとも心理? よくはわからない。その境界線上で痛みは生まれる。
幸い、母はこれからも通院するつもりになっている。
■このブログ以外の連載を紹介します。
○ユーラシア大陸最南端から北極圏の最北端駅への列車旅は、ロシアに入国。
http://www.asahi.com/and_M/clickdeep_list.html
○人々が通りすぎる世界の空港や駅物語。2回目はドンムアン空港。
http://dot.asahi.com/dot/2016042600040.htmlどこへと訊かれて/
○苦戦を強いられている東南アジア「完乗」の旅。いまはタイ南部をうろうろしてます。
http://tabilista.com/cat/se-asia/
○LCCを軸にした世界の飛行機搭乗記は
http://tabinote.jp/
Posted by 下川裕治 at 12:38│Comments(1)
この記事へのコメント
鬱と痛み
ココロとカラダ
その関係は医者でも見解が分かれそうですね。
僕も息苦しくなります。
気分的に息苦しいのではなく
実際に息苦しくなるのです。
(内科的な異常はないのです)
それは海外に行くと不思議と
全く息苦しくないのです。
ゲンキンなカラダ?ココロ?
だなぁと我ながら思います。
お母さんにとってのそういう場所が有ると良いですね。
湯治とかどうでしょう?
ココロとカラダ
その関係は医者でも見解が分かれそうですね。
僕も息苦しくなります。
気分的に息苦しいのではなく
実際に息苦しくなるのです。
(内科的な異常はないのです)
それは海外に行くと不思議と
全く息苦しくないのです。
ゲンキンなカラダ?ココロ?
だなぁと我ながら思います。
お母さんにとってのそういう場所が有ると良いですね。
湯治とかどうでしょう?
Posted by たぬきまるだいすけ at 2016年05月25日 01:20
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