2016年09月12日
バイクタクシーで広島優勝
ベトナムのタイグエンという街にいる。予想以上に大きな街で少し戸惑うほどだ。
東南アジアの鉄道の全路線に乗るという旅を、少しずつ続けている。今回はベトナム。ハノイを中心にしたいくつかの支線に乗り残しがあった。
ハノイのロンビエン駅から列車に乗ったのが午後4時半だった。ロンビエン橋のたもとにある駅だ。
支線を走る列車はハノイ駅周辺の駅を始発駅にしている。ロンビエン、ザーラム、イェンヴィエンなどの駅から出る。ハノイ駅はホームが10本もある立派な駅だ。ベトナム人にいわせると、ハノイ駅は発着本数が多く、混雑するするため、近隣駅を始発にしているというのだが。しかし、ハノイ駅を発車する列車は、1日20本にも達しない。日本だったら簡単にひと駅でこなすだろう。
そんなことを考えながら列車を待った。乗ったのはクアンティウ行きだ。1日に1往復しかない。クアンティウまでは2時間ほどなのだが、終着駅で1日停車し、翌日に戻ってくる。
クアンティウに宿があるのかもわからなかった。ネットで検索しても1軒も見つからなかった。
「まあ、なんとかなるだろう」
そんな心境だった。
もうひとつ、気になることがあった。ベトナムや列車とはまったく関係のない、広島と巨人戦だった。その日、広島が勝てばリーグ優勝が決まる。25年ぶりである。
野球少年の頃から広島ファンだった。安仁屋より外木場という投手が好きだった。しかし広島はいつも弱かった。とくに巨人戦は頼りなく、投手が好投しても、終盤になるといつも逆転された。かつての広島の市民球場にも何回か足を運んだ。地方球場丸出しの汚いヤジに広島を実感したものだった。
ところが最近、カープ女子も出現し、広島ファンの様相も変わってきた。だからということもないだろうが、今年の広島は本当に強かった。首位を独走しているときはうれしかったが、マジックが出たときは戸惑いすら覚えた。いつも頑張るのは5月までだった。弱いチームの典型だった。それに比べると、今年の巨人は弱い。かつての広島と巨人の関係が逆転していた。
今回はスマホにインターネットシムカードを入れていた。巨人戦の戦況が逐一わかる。やがて鉄道旅の原稿を書かなくてはいけないから、車窓風景にも視線を送らなければいけない。しかしついネットにつないでしまう。
終着駅まで乗った客は10人ほどだった。駅は暗く、駅員もいない。バイクタクシーのおじさんがぼんやり客を待っていた。身振り手振りの頼りない会話。結局、ひとつ手前のタイグエンにバイクで戻ることになった。タイグエンにホテルがあることはわかっていた。が、全線に乗らなくてはいけないから、途中では降りることができないのだ。
バイクの後部座席で風に吹かれながら、ネットをつなぐ。広島は勝利した。小さくガッツポーズ。バイクタクシーのおじさんは、なにも知らずにハンドルを握る。どうしてひとつ手前のタイグエンで降りなかったのかも知らない。
■このブログ以外の連載を紹介します。
○クリックディープ旅=台湾のディープ旅がはじまります。
○どこへと訊かれて=人々が通りすぎる世界の空港や駅物。
○東南アジア全鉄道走破の旅=苦戦を強いられている東南アジア「完乗」の旅。マレーシアの鉄道の完乗し、ベトナムへ。
○タビノート=LCCを軸にした世界の飛行機搭乗記
東南アジアの鉄道の全路線に乗るという旅を、少しずつ続けている。今回はベトナム。ハノイを中心にしたいくつかの支線に乗り残しがあった。
ハノイのロンビエン駅から列車に乗ったのが午後4時半だった。ロンビエン橋のたもとにある駅だ。
支線を走る列車はハノイ駅周辺の駅を始発駅にしている。ロンビエン、ザーラム、イェンヴィエンなどの駅から出る。ハノイ駅はホームが10本もある立派な駅だ。ベトナム人にいわせると、ハノイ駅は発着本数が多く、混雑するするため、近隣駅を始発にしているというのだが。しかし、ハノイ駅を発車する列車は、1日20本にも達しない。日本だったら簡単にひと駅でこなすだろう。
そんなことを考えながら列車を待った。乗ったのはクアンティウ行きだ。1日に1往復しかない。クアンティウまでは2時間ほどなのだが、終着駅で1日停車し、翌日に戻ってくる。
クアンティウに宿があるのかもわからなかった。ネットで検索しても1軒も見つからなかった。
「まあ、なんとかなるだろう」
そんな心境だった。
もうひとつ、気になることがあった。ベトナムや列車とはまったく関係のない、広島と巨人戦だった。その日、広島が勝てばリーグ優勝が決まる。25年ぶりである。
野球少年の頃から広島ファンだった。安仁屋より外木場という投手が好きだった。しかし広島はいつも弱かった。とくに巨人戦は頼りなく、投手が好投しても、終盤になるといつも逆転された。かつての広島の市民球場にも何回か足を運んだ。地方球場丸出しの汚いヤジに広島を実感したものだった。
ところが最近、カープ女子も出現し、広島ファンの様相も変わってきた。だからということもないだろうが、今年の広島は本当に強かった。首位を独走しているときはうれしかったが、マジックが出たときは戸惑いすら覚えた。いつも頑張るのは5月までだった。弱いチームの典型だった。それに比べると、今年の巨人は弱い。かつての広島と巨人の関係が逆転していた。
今回はスマホにインターネットシムカードを入れていた。巨人戦の戦況が逐一わかる。やがて鉄道旅の原稿を書かなくてはいけないから、車窓風景にも視線を送らなければいけない。しかしついネットにつないでしまう。
終着駅まで乗った客は10人ほどだった。駅は暗く、駅員もいない。バイクタクシーのおじさんがぼんやり客を待っていた。身振り手振りの頼りない会話。結局、ひとつ手前のタイグエンにバイクで戻ることになった。タイグエンにホテルがあることはわかっていた。が、全線に乗らなくてはいけないから、途中では降りることができないのだ。
バイクの後部座席で風に吹かれながら、ネットをつなぐ。広島は勝利した。小さくガッツポーズ。バイクタクシーのおじさんは、なにも知らずにハンドルを握る。どうしてひとつ手前のタイグエンで降りなかったのかも知らない。
■このブログ以外の連載を紹介します。
○クリックディープ旅=台湾のディープ旅がはじまります。
○どこへと訊かれて=人々が通りすぎる世界の空港や駅物。
○東南アジア全鉄道走破の旅=苦戦を強いられている東南アジア「完乗」の旅。マレーシアの鉄道の完乗し、ベトナムへ。
○タビノート=LCCを軸にした世界の飛行機搭乗記
Posted by 下川裕治 at 10:33│Comments(2)
この記事へのコメント
「東南アジアの鉄道全路線に乗る旅」をさせられている下川先生。このような企画が出てきてしまう原因として、かつての鉄道紀行作家である故・宮脇俊三先生の著書「時刻表二万キロ」が大きく関わっていますね。 昭和50年代に、当時の国鉄全路線に乗車し、そこに至るまでの工程を旅行記にしたもの。
この本がきっかけで、「JR全線に乗車した」とか、「日本のすべての鉄道路線に乗車した」とか、そんなことが鉄道ファンのステイタスみたいなものになってしまいました。 鉄道ファン向けの雑誌がそういうのを煽ったという面もありますが。
鉄道ファンでもない下川先生、出版社からの無茶な要望で、こんな企画を引き受けてしまったのですね・・・。
ビルマ(ミャンマー)あたりだと、外国人乗車禁止路線みたいなのもあるような気がするのですが、無理のないように。
この本がきっかけで、「JR全線に乗車した」とか、「日本のすべての鉄道路線に乗車した」とか、そんなことが鉄道ファンのステイタスみたいなものになってしまいました。 鉄道ファン向けの雑誌がそういうのを煽ったという面もありますが。
鉄道ファンでもない下川先生、出版社からの無茶な要望で、こんな企画を引き受けてしまったのですね・・・。
ビルマ(ミャンマー)あたりだと、外国人乗車禁止路線みたいなのもあるような気がするのですが、無理のないように。
Posted by ダイスケ at 2016年09月12日 22:40
広島カープのリーグ優勝決定戦、私も当日TV中継を見ていました。
ここ数年チャンネルを合わせることは全くなかったのですが、久し振りに見てみるとやっぱり野球っておもしろいですね。
海外にいても贔屓のチームの試合が気になってしまう気持ち、少しわかるような気がします。
でも、バイクタクシーに乗りながらの観戦はやはり危ないのでお気を付けて^^;
ここ数年チャンネルを合わせることは全くなかったのですが、久し振りに見てみるとやっぱり野球っておもしろいですね。
海外にいても贔屓のチームの試合が気になってしまう気持ち、少しわかるような気がします。
でも、バイクタクシーに乗りながらの観戦はやはり危ないのでお気を付けて^^;
Posted by たぬきまるようこ at 2016年09月15日 14:53
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