インバウンドでタイ人を集客! 事例多数で万全の用意 [PR]
ナムジャイブログ

2010年01月05日

浮浪者を飼う

 ひょんなことから猫を飼うことになってしまった。それも2匹。生後2ヵ月ほどの子猫である。
 ことの起こりは昨年の11月の終わり。隣の家のボイラーのあたりから、子猫の鳴き声が聞こえてきたことだった。どうもそこで1匹の野良猫が子どもを生んだようなのだ。餌を求めて親猫が放れる間、ずっと鳴き声が聞こえてくる。東京の11月末はかなり冷え込む。
 我が家は猫を飼ったことはなかった。その先、どういうことになるかもわからず、餌を置いてしまった。それから2日後、まず親が現れ、翌日には2匹の子猫を連れてきた。隣の家との間にはブロック塀がある。親は1匹ずつくわえ、塀を乗り越えて、運んできたらしい。3匹の猫が裏庭にいる。僕らは餌を買い、段ボール箱のねぐらをつくってあげた。
「猫屋敷になりますね」
 いまも猫を飼う知人はそういった。猫は次々に子どもを生む。野良猫ほど繁殖力が強いのだという。どこかに猫同士で情報交換をする場所があり、近所の猫も集まってくる。
「浮浪者に食事をあげたようなものですよ」
 猫を飼っている知人の言葉は冷静で、それゆえに冷たくも聞こえる。
 選択肢は絞られてくる。
■餌をあげない。やがて3匹はどこかへいく。
■3匹とも去勢・避妊手術を受けさせる。子どもはできないので、猫屋敷化をある程度防ぐことができる。
■3匹とも去勢・避妊し、子猫を飼う。親はすでに野良猫なので、家で飼うことは難しい。
 我が家のふたり娘も大きくなった。20歳と18歳である。もう子どもではない。妻の心の隙間に2匹の子猫が入り込んでしまった。
 日本はかわいそうな野良猫を守る団体がいくつもある。区や市から援助を受けているNPOも多い。そのひとつに相談し、去勢・避妊をすることになった。通常の獣医さんに比べれば半額ほどで手術をしてくれる。それでも1万円近くがかかる。しかし飼い猫ではない3匹を捕まえることは大変で、捕獲器を借りた。
 我が家のリビングを2匹の子猫が飛びまわっている。その姿を見ながら、昔、ドイツのベルリンで聞いた言葉を思い出した。壁が崩壊する前の西ベルリンである。
「ヨーロッパでペットの割合がいちばん多いのが西ベルリンなんだ。ここは東に向けてのショウーウインドーみたいな街だろ。産業はない。若者は西ドイツに行くしかない。いるのは昔からベルリンに住んでいる老人ばかりだからね」
 日本もとんでもない早さで老人国家に向かっている。我が家はその典型ということか。


Posted by 下川裕治 at 17:20│Comments(0)
※このブログではブログの持ち主が承認した後、コメントが反映される設定です。
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。