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ナムジャイブログ

2017年10月23日

不謹慎な好奇心

 衆議院の総選挙が行われた昨日、日本列島を台風が直撃した。いま台風の中心は東北地方で、東京にも不穏な強風が吹いている。これから南風が一気に吹き込み、気温もあがっていくだろう。台風一過……。そんな言葉が夜のニュースでは流れるのかもしれない。
 台風や大雪が降った朝、なぜか早くに目が覚める。どうなったか……と気になる、といえば聞こえはいいが、心中、わくわくする思いがある。不謹慎だとは思う。台風の被害に遭った人がいる。昨夜の台風では犠牲者も出ている。それなのに、増水した川を眺めて満足するようなところがある。
 小学校の低学年の頃、台風が過ぎた朝、近くのクルミの木に急いだ。強風に煽られて落ちたクルミの実を拾いにいったのだ。近くにある家のクルミの木だったが、落ちたものは拾っていい、という不文律があった。
 別に、食料がなかったわけではないが、落ちたクルミの実を拾う時間はわくわくした。
 バングラデシュでも同じような話を聞いたことがある。サイクロンがやってくると住民はマンゴーの畑に入る。風で落ちたマンゴーはもち去ってよかったからだ。マンゴーはウルシ科の植物である。まだ熟していない実を食べると腫れることがある。サイクロンが去った朝、目を赤く腫らした人々が村や市場を埋めていたという。
 貧しい人たちにとって、サイクロンは天の恵だった。一歩間違えば、水害や強風で犠牲者も出してしまうのだが、強風の中、マンゴー畑に入る人々の目は輝いていたはずだ。
 不謹慎と思いながらも、人は好奇心を抑えられないところがある。火事の現場に集まる野次馬というのはその典型だろう。
「おーッ、あそこに火が移った」
 などという声があがる。
 台風が去った朝も同じで、意味もなく街を歩き、折れた枝の前で立ち止まったりしてしまう。
 好奇心とは、ときに不謹慎なものだ。
 昨夜、総選挙の開票速報をぼんやり眺めながら、そんなことを考えていた。選挙にしても、まじめに日本の将来を考えて票を入れた人もいるだろうが、この人が当選したら面白そうだ……という好奇心で投票する人もいる。1票は貴重かもしれないが1票の影響力というものも人はわかっている。無党派層をとり込むなどというが、その票の一部は好奇心に左右されるような気がする。
 開票速報を映しだすテレビ画面の右隅には天気図がいつも出ていた。台風の進路がそれでわかる。選挙の1票をめぐる好奇心に比べれば、台風の好奇心は等身大だ。天候というものは偉大で、すべての人を平等に支配していく。
 総選挙では風は吹かなかった。台風の被害も我が家の周りにはない。また締め切りに追われる普通の日々がはじまる。

■このブログ以外の連載を紹介します。
○クリックディープ旅=インドネシアの列車旅がはじまります。
○どこへと訊かれて=人々が通りすぎる世界の空港や駅物。
○東南アジア全鉄道走破の旅=苦戦を強いられている東南アジア「完乗」の旅。難関のミャンマーの列車旅。いまは番外編を連載。
○タビノート=LCCを軸にした世界の飛行機搭乗記


Posted by 下川裕治 at 15:46│Comments(1)
この記事へのコメント
私が今まで住んできた場所では、台風だからと言ってそれほど大きな被害が出るという事がなかったのです。
それだけに、いつかニュースで見た沖縄の台風が忘れられません。
風圧で軽自動車がひっくり返っている。
口を開けたままその映像を見ていたのを思い出します。

今回の被害は雨の中、投票に行ったときスニーカーと靴下がびしょびしょに濡れたくらいです。
いつかマンゴー拾ってみたいです。
Posted by たぬきまるだいすけ at 2017年11月09日 16:12
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