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ナムジャイブログ

2018年04月16日

春を駆け抜けてきた

 今日ソウルから春の嵐の東京に戻った。春の嵐というと、突然の突風に煽られて苦労はするのだが、人々の顔にはどこか険しさがない。子どものいたずらに出合ったときによく似ている。
 しかし乗っている飛行機が、春の嵐に巻き込まれると、さすがに怖い。揺れは内臓を突きあげるように体を襲う。
 ソウルから乗ったイースタージェットという韓国のLCCは、果敢に強風に突っ込んでいったのだが、途中で一気に高度をあげた。しばらく成田空港の上空を旋回していたが、やがてこんなアナウンスが流れることになる。
「関西国際空港に向かいます」
 関空で1時間ほど待機しただろうか。再び成田空港に向かって離陸した。成田空港は、3時間前の嵐が嘘のように収まっていた。ターミナルを出ると、湿り気のある温かい空気に包まれた。その湿気が日本を思い出させた。
 中国の新疆ウイグル自治区からキルギスタンへ。そこからカザフスタン、ウズベキスタンをまわってソウルに旅だった。
 新疆ウイグル自治区のカシュガルには、柳絮(りゅうじょ)が舞っていた。タンポポの綿毛のついた種子をもう少し小ぶりにしたような柳の種子である。
 北京ではこの柳絮を「春の雪」と呼んでいる。北京の春は短いが、柳の種が街に舞うと一気に春がやってくるのだ。カシュガルも春は短い。しばらくすると、気温が40度を超えるような夏に突入してしまう。乾燥地帯の春は一瞬である。
 しかし人々は、その短い春を体全体で受け止めていた。
 中央アジアも春のただなかだった。1年のなかで最もいい季節だ。夏は酷暑にあえぎ、冬は雪まで降る。そんな激しい気候のなかで、どこかほっとするような光が、ビシュケクやタシケントを包む。人々は公園のベンチに座り、春の風に揺れるプラタナスの葉に目を細める。
 飛行機の関係でソウルにも寄った。春の韓国といえば、レンギョウの黄色い花である。ソウルは4月の初旬、街を黄で染まっていく。もっとも最近は、日本同様、桜もみごとな花をつける。韓国人のなかには、「桜はもともと朝鮮半島のもの」と主張する人がいる。どこか領土問題を思い出してしまうのだが、どちらにせよ、桜に罪はない。
 ソウルのレンギョウや桜の季節は終わり春の雨が降っていた。温かい雨というにはほど遠いが、その弱い雨脚に春が潜んでいた。
 中国の西域から中央アジア、韓国と緯度があまり変わらないエリアを歩いた旅は、春を駆け抜けるような旅だった。
 その仕上げが日本の嵐ということなのだろうか。

■このブログ以外の連載を紹介します。
○クリックディープ旅=玄奘三蔵が辿ったシルクロードの旅。今は中国編を連載中。
○どこへと訊かれて=人々が通りすぎる世界の空港や駅物。
○東南アジア全鉄道走破の旅=苦戦を強いられている東南アジア「完乗」の旅。インドネシアの列車旅の連載中。
○タビノート=LCCを軸にした世界の飛行機搭乗記


Posted by 下川裕治 at 19:00│Comments(0)
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