2019年05月08日
つながりはお金だけじゃない
昨日(5月7日)から、準備を進めていたクラウドファンディングがはじまった。僕は30年近く前から、バングラデシュで小学校の運営にかかわっている。その校舎の老朽化が進み、その修繕費用をクラウドファンディングという方法で集めることになったのだ。
今年の2月、バングラデシュのコックスバザールを訪ねた。僕らが運営する小学校は、この街の仏教寺院の敷地内にある。
コックスバザールを訪ねる目的は、この学校運営にかかわることが多い。いつも校長室に先生たちが集まり、小学校の今後を話し合う。耳に痛い言葉に毎回、晒されることになる。学校運営はどうしても資金問題に収れんしてしまうからだ。
小学校の開設は、友人のフリージャーナリストの死だった。ミャンマーとの国境に入り込んだ彼は、そこで熱帯熱マラリアに罹ってしまう。彼の死後、知人たちが集まり学校運営がはじまった。
コックスバザールには、ラカイン族という少数の仏教徒がいる。知人が日本に伝えようとしたのがラカイン族の存在だった。
ラカイン族はバングラデシュでは多数を占めるイスラム教のベンガル人社会のなかで生きていかなくてはならなかった。そこには教育が必要だった。ベンガル人の社会に食い込んでいかなくては、彼らはいつまでも貧しいままだった。
そこで小学校だったのだが、その運営はなかなか大変だった。日本の経済は停滞期に入り、寄付を募ることが苦しくなってきた。学校が30年も続くと、支援メンバーの高齢化も進む。支援側の体力の低下に追い打ちをかけるように、バングラデシュの物価がどんどんあがっていった。
先生たちからはさまざまな要求が挙げられる。副教材の充実や英語学級の新設、そして給料の増額……。学校が開設されてから20年をすぎた頃から、苦しい状態が続いていた。それでも9人の先生たちは、学校を辞めずに働いてくれた。
コックスバザールに行くたびに、実現できない要求が肩に重くなっていく。学校に行く足どりが重くなる。
そこに、校舎の老朽化問題がもちあがった。「もう、無理かもしれない」。そんな思いがあった。
今年の2月、コックスバザールを訪ねたときは、別の仕事があり、カメラマンが同行していた。彼からクラウドファンディングを教えられた。ネットというツールを使えば、新たな協力者が出てきてくれるのだろうか。
学校の先生を前に、その話をした。先生のひとりからこういわれた。
「頑張ってください。でも、うまくいかなくても、ときどき日本人を連れてやってきてください。私たちのつながりはお金だけじゃないんですから」
こみあげるものがあった。援助とはそういうことなのかもしれない……と。クラウドファンディングの詳細は以下から
https://a-port.asahi.com/projects/sazanpen/
今週号のクリックディープ旅でも学校を紹介している。
■このブログ以外の連載を紹介します。
○クリックディープ旅=再び「12万円で世界を歩く」のシリーズが連載中。
○どこへと訊かれて=人々が通りすぎる世界の空港や駅物。
○東南アジア全鉄道走破の旅=苦戦を強いられている東南アジア「完乗」の旅。いまは番外編を連載中。
○タビノート=LCCを軸にした世界の飛行機搭乗記
今年の2月、バングラデシュのコックスバザールを訪ねた。僕らが運営する小学校は、この街の仏教寺院の敷地内にある。
コックスバザールを訪ねる目的は、この学校運営にかかわることが多い。いつも校長室に先生たちが集まり、小学校の今後を話し合う。耳に痛い言葉に毎回、晒されることになる。学校運営はどうしても資金問題に収れんしてしまうからだ。
小学校の開設は、友人のフリージャーナリストの死だった。ミャンマーとの国境に入り込んだ彼は、そこで熱帯熱マラリアに罹ってしまう。彼の死後、知人たちが集まり学校運営がはじまった。
コックスバザールには、ラカイン族という少数の仏教徒がいる。知人が日本に伝えようとしたのがラカイン族の存在だった。
ラカイン族はバングラデシュでは多数を占めるイスラム教のベンガル人社会のなかで生きていかなくてはならなかった。そこには教育が必要だった。ベンガル人の社会に食い込んでいかなくては、彼らはいつまでも貧しいままだった。
そこで小学校だったのだが、その運営はなかなか大変だった。日本の経済は停滞期に入り、寄付を募ることが苦しくなってきた。学校が30年も続くと、支援メンバーの高齢化も進む。支援側の体力の低下に追い打ちをかけるように、バングラデシュの物価がどんどんあがっていった。
先生たちからはさまざまな要求が挙げられる。副教材の充実や英語学級の新設、そして給料の増額……。学校が開設されてから20年をすぎた頃から、苦しい状態が続いていた。それでも9人の先生たちは、学校を辞めずに働いてくれた。
コックスバザールに行くたびに、実現できない要求が肩に重くなっていく。学校に行く足どりが重くなる。
そこに、校舎の老朽化問題がもちあがった。「もう、無理かもしれない」。そんな思いがあった。
今年の2月、コックスバザールを訪ねたときは、別の仕事があり、カメラマンが同行していた。彼からクラウドファンディングを教えられた。ネットというツールを使えば、新たな協力者が出てきてくれるのだろうか。
学校の先生を前に、その話をした。先生のひとりからこういわれた。
「頑張ってください。でも、うまくいかなくても、ときどき日本人を連れてやってきてください。私たちのつながりはお金だけじゃないんですから」
こみあげるものがあった。援助とはそういうことなのかもしれない……と。クラウドファンディングの詳細は以下から
https://a-port.asahi.com/projects/sazanpen/
今週号のクリックディープ旅でも学校を紹介している。
■このブログ以外の連載を紹介します。
○クリックディープ旅=再び「12万円で世界を歩く」のシリーズが連載中。
○どこへと訊かれて=人々が通りすぎる世界の空港や駅物。
○東南アジア全鉄道走破の旅=苦戦を強いられている東南アジア「完乗」の旅。いまは番外編を連載中。
○タビノート=LCCを軸にした世界の飛行機搭乗記
Posted by 下川裕治 at 11:22│Comments(0)
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