2020年06月08日
66歳の誕生日
66歳になった。誕生日に日本にいるのは久しぶりである。10年以上、いつもタイのバンコクにいた。僕は長く、「歩くバンコク」という地図型ガイドの編集にかかわっている。発行時期から逆算すると、ちょうど僕の誕生日前後が内容のチェック時期にあたる。バンコクに滞在し、「歩くバンコク」の細かい文字を追っていた。
今年も例年と同じスケジュールで編集作業は進んでいたが、タイも日本も新型コロナウイルスである。日本人向けのガイドだから、日本人観光客が自由にタイに行くことができないと……。編集を中断することになった。
3月末に日本に帰国したが、それ以降、海外に出ることが難しくなった。2ヵ月以上、日本にいることになる。いまの日本は、東京から地方に行くことも制限されている。その間、延々と東京にいる。10年来の珍事ということになる。
その間、本の原稿や、日々の締め切りに追われていた。僕の場合、こういった巣ごもり状態と旅が繰り返される日々を長年、続けてきた。旅の部分がすっぽり抜けたわけだ。
ウイルスに関する本をよく読んだ。そしていま、新型コロナウイルスを俯瞰して眺めると、少し暗澹とした気分になる。
ひとつは科学の進む方向である。いまの時点で、新型コロナウイルスへの対応の評価は隔離やロックダウンなどの公衆衛生に収斂されている。たしかに公衆衛生学は経験を積んだかもしれないが、ウイルスそのものへの科学が見えてこない。ウイルス学を進化させるためには、多くの人が罹患することが早道なのだが、人類は怖がっているばかりだ。これから二波や新しいウイルスに人間は晒されていくが、再び同じ手法で対応するしかない。
新型コロナウイルスは、人の生活スタイルを変えるほどの大きな波ではない。ウイルス感染は都市型の疫病である。それに対して、リモートワークが進み、生活拠点を地方に移す人が増えると専門家はいう。たしかしそうなのかもしれないが、その世代の次という年月の長さで眺めれば、子供たちは再び都市に人は集まってくる。これまでも何回となく繰り返されてきた人の営みである。
しかし、そんな人間たちがいとおしい。人の心の大半を占めるのは、自分の人生への利己的な思いである。新型コロナウイルスの犠牲者に右往左往し、ロックダウンを強いられた店の減収に頭を痛める。
スパンが違うふたつの世界は混同され、人々を混濁させる。
66歳になった。これだけ生きてくれば、少しはわかってきたこともある。しかしそれは明快な解決への道ではなく、解決できないということがわかることが多い。
そういうことなのだ……。
家族からプレゼントをもらった。薄手のジャンパーだ。ときに冷房がきついアジアでは重宝する。
■“旅情報ノート”クラブの内容は、以下のサイトで?http://www.arukubkk.com/
■このブログ以外の連載を紹介します。
○クリックディープ旅=沖縄の離島のバス旅がはじまります。
○旅をせんとやうまれけむ=つい立ち止まってしまうアジアのいまを。
○アジアは今日も薄曇り=沖縄の離島のバス旅シリーズがはじまります。
○タビノート=LCCを軸にした世界の飛行機搭乗記
■ツイッターは@Shimokawa_Yuji
今年も例年と同じスケジュールで編集作業は進んでいたが、タイも日本も新型コロナウイルスである。日本人向けのガイドだから、日本人観光客が自由にタイに行くことができないと……。編集を中断することになった。
3月末に日本に帰国したが、それ以降、海外に出ることが難しくなった。2ヵ月以上、日本にいることになる。いまの日本は、東京から地方に行くことも制限されている。その間、延々と東京にいる。10年来の珍事ということになる。
その間、本の原稿や、日々の締め切りに追われていた。僕の場合、こういった巣ごもり状態と旅が繰り返される日々を長年、続けてきた。旅の部分がすっぽり抜けたわけだ。
ウイルスに関する本をよく読んだ。そしていま、新型コロナウイルスを俯瞰して眺めると、少し暗澹とした気分になる。
ひとつは科学の進む方向である。いまの時点で、新型コロナウイルスへの対応の評価は隔離やロックダウンなどの公衆衛生に収斂されている。たしかに公衆衛生学は経験を積んだかもしれないが、ウイルスそのものへの科学が見えてこない。ウイルス学を進化させるためには、多くの人が罹患することが早道なのだが、人類は怖がっているばかりだ。これから二波や新しいウイルスに人間は晒されていくが、再び同じ手法で対応するしかない。
新型コロナウイルスは、人の生活スタイルを変えるほどの大きな波ではない。ウイルス感染は都市型の疫病である。それに対して、リモートワークが進み、生活拠点を地方に移す人が増えると専門家はいう。たしかしそうなのかもしれないが、その世代の次という年月の長さで眺めれば、子供たちは再び都市に人は集まってくる。これまでも何回となく繰り返されてきた人の営みである。
しかし、そんな人間たちがいとおしい。人の心の大半を占めるのは、自分の人生への利己的な思いである。新型コロナウイルスの犠牲者に右往左往し、ロックダウンを強いられた店の減収に頭を痛める。
スパンが違うふたつの世界は混同され、人々を混濁させる。
66歳になった。これだけ生きてくれば、少しはわかってきたこともある。しかしそれは明快な解決への道ではなく、解決できないということがわかることが多い。
そういうことなのだ……。
家族からプレゼントをもらった。薄手のジャンパーだ。ときに冷房がきついアジアでは重宝する。
■“旅情報ノート”クラブの内容は、以下のサイトで?http://www.arukubkk.com/
■このブログ以外の連載を紹介します。
○クリックディープ旅=沖縄の離島のバス旅がはじまります。
○旅をせんとやうまれけむ=つい立ち止まってしまうアジアのいまを。
○アジアは今日も薄曇り=沖縄の離島のバス旅シリーズがはじまります。
○タビノート=LCCを軸にした世界の飛行機搭乗記
■ツイッターは@Shimokawa_Yuji
Posted by 下川裕治 at 11:40│Comments(1)
この記事へのコメント
お誕生日おめでとうございます。
早く、海外旅行ができる日々が再びやってきてほしいものですね。
早く、海外旅行ができる日々が再びやってきてほしいものですね。
Posted by りゅうじ at 2020年06月10日 23:22
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