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ナムジャイブログ

2021年02月01日

脱力のアジアという奥義

 東京の緊急事態宣言は、取材活動にも大きく影響する。不要不急の外出を控えるという対象に、取材も含まれるのか。新聞社、出版社、テレビ局などは悩む。ガイドラインがあるわけではない。気にするのは、読者や視聴者の反応である。
 僕の取材は旅である。旅をすることが取材ということになる。自分からいうのもなんだが、旅は不要不急である。不要かどうかは難しいが、少なくとも急ぐ必要はない。
 となると……。
 今回の緊急事態宣言が解除されても、コロナ禍が終わるわけではない。これからも緊急事態宣言が出る可能性は高い。その内容はもっと厳しくなるかもしれない。
 それに備えて、アジアの料理を家で再現してみることになった。といっても、僕の親しんだアジアの料理である。高級な本格料理はなにもない。
「中国のカップ麺と魚肉ソーセージ、いや中国は豚肉ソーセージを、列車のなかでよく食べたな」
「それを再現するんですか。料理じゃないじゃないですか」
「そういわれても……」
 やりとりのなかで、バートンコーをつくってみることになった。タイ風の揚げパンである。中国圏では油條と書く。タイのそれとは形やサイズが違うが。
 気軽に考えていた。ネットを見ると、そのつくり方がいくつも出てくる。
 あるレシピをもとにつくってみた。食パンの耳を揚げたようなものになってしまった。まったく違う。なにがいけないのか、よくわからない。
 別のレシピで再度、つくってみた。強力粉と薄力粉を半分ずつ。そこにドライイーストとベーキングパウダー、塩を加え、ぬるま湯を入れてこねる。それを一次発酵させる。
 なんとなく近い気がする。油も高温にして揚げてみた。だいぶバートンコーに近づいたが、まだ違う。中身がしっかり詰まってしまい、硬い。あのサクサクとした軽みと、もちッとした感覚がない。
 また悩む。なにがいけないのだろう。
 バンコクの路上の朝を思い起こす。僕は毎朝のようにバートンコーを買っていた。おじさんは慣れた手つきで成形し、それを大きな鍋に入れられた油のなかに入れる。厚さ5ミリほどのものが、熱い油のなかでふわっと膨らむ。そんな光景を毎日見ていた。
 しかし自分でつくったものが、この「ふわっ」がない。なぜだろうか。
 昔から、タイでわからないことを詰めていくと、膝がかっくんとなるような脱力のアジアに出合うことがよくあった。今回もそのパターンなのだろうか。
 アジアの料理を再現するということは、つまりそういうことなのかもしれない。
 試行錯誤が続く。


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Posted by 下川裕治 at 11:55│Comments(0)
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