2021年02月08日
ミャンマー国軍は追い込まれている?
ミャンマーで国軍によるクーデターが起きた。2月7日のいま、ミャンマーとの通信はすべて遮断されている。
クーデターが起きたのは2月1日の朝である。与党のNLD(国民民主連盟)の幹部を早朝に拘束し、クーデターは実行に移された。党首のアウンサンスーチーも拘束された。
いろんな人から連絡が入った。「ミャンマーにいる知人に連絡がとれない」、「日本にいるミャンマー人からコメントをとれないだろうか」……。ばたばたとした半日がすぎていった。
ミャンマー国軍がクーデターに踏み切った理由は、昨年11月の選挙だった。この選挙でNLDは圧勝。過半数の議席を確保した。これに対して、ミャンマー軍は選挙に不正があったと主張。選挙結果の再審査を要求したが、NLDはこれに応じなかった。国軍はクーデターをちらつかせていた。
選挙に不正があった──という主張は敗北した陣営からしばしば挙がる声だ。アメリカのトランプ元大統領もそうだった。しかしその主張の裏には、ひとつの含意がある。
選挙結果というものは、そう簡単に覆されるものではない。大切なことは、選挙に不正があったと主張することだった。そこにあるのは支持者への自己正当化である。いいわけといってもいいのだが。
経緯は少し違うが、同じ論理で、訴えられたことがあった。阪神・淡路大震災のときだった。出版社の依頼を受け、市長の奮戦記を本にまとめた。
その年、市長選があった。震災時、対立候補からも話を訊き、その内容も本には盛り込んだ。対立候補は前市長だった。その対立候補が、僕と出版社に対して訴訟をおこしたのだ。本の内容を問題視していた。
訴えられたのははじめてだった。戸惑いもあった。出版社と話し合い、弁護士にも加わってもらい、裁判に備えることになった。準備も進めていた。
選挙が行われた。僕が奮戦記を書いた市長が再選された。
その翌日、出版社から連絡を受けた。
「対立候補は訴訟をとりやめたという通知がきました」
「はッ?」
選挙対策用の訴訟だったのだ。「本の内容については事実無根であり、いま訴訟を起こしています」と訴えることで、自らの正当性に導こうとしているようだった。
選挙にまつわるトラブルには、この種の展開が多い。
しかしミャンマー国軍は動いてしまった。ミャンマー人に訊くと多くがこういった。
「軍がクーデターというのは脅しだと思っていました」
NLDも国軍はクーデターを起こさないと読んでいた節もある。
しかし国軍はクーデターに走った。それだけ追い込まれているらしい。その話はまた追って。
■YouTubeチャンネルをつくりました。「下川裕治のアジアチャンネル」。
https://www.youtube.com/channel/UCgFhlkMPLhuTJHjpgudQphg?view_as=public
観てみてください。面白そうだったらチャンネル登録を。
■このブログ以外の連載を紹介します。
○クリックディープ旅=芭蕉の「奥の細道」を辿る旅を連載中。
○旅をせんとやうまれけむ=つい立ち止まってしまうアジアのいまを。
○アジアは今日も薄曇り=沖縄の離島のバス旅シリーズを連載中。
○タビノート=LCCを軸にした世界の飛行機搭乗記
■ツイッターは@Shimokawa_Yuji
クーデターが起きたのは2月1日の朝である。与党のNLD(国民民主連盟)の幹部を早朝に拘束し、クーデターは実行に移された。党首のアウンサンスーチーも拘束された。
いろんな人から連絡が入った。「ミャンマーにいる知人に連絡がとれない」、「日本にいるミャンマー人からコメントをとれないだろうか」……。ばたばたとした半日がすぎていった。
ミャンマー国軍がクーデターに踏み切った理由は、昨年11月の選挙だった。この選挙でNLDは圧勝。過半数の議席を確保した。これに対して、ミャンマー軍は選挙に不正があったと主張。選挙結果の再審査を要求したが、NLDはこれに応じなかった。国軍はクーデターをちらつかせていた。
選挙に不正があった──という主張は敗北した陣営からしばしば挙がる声だ。アメリカのトランプ元大統領もそうだった。しかしその主張の裏には、ひとつの含意がある。
選挙結果というものは、そう簡単に覆されるものではない。大切なことは、選挙に不正があったと主張することだった。そこにあるのは支持者への自己正当化である。いいわけといってもいいのだが。
経緯は少し違うが、同じ論理で、訴えられたことがあった。阪神・淡路大震災のときだった。出版社の依頼を受け、市長の奮戦記を本にまとめた。
その年、市長選があった。震災時、対立候補からも話を訊き、その内容も本には盛り込んだ。対立候補は前市長だった。その対立候補が、僕と出版社に対して訴訟をおこしたのだ。本の内容を問題視していた。
訴えられたのははじめてだった。戸惑いもあった。出版社と話し合い、弁護士にも加わってもらい、裁判に備えることになった。準備も進めていた。
選挙が行われた。僕が奮戦記を書いた市長が再選された。
その翌日、出版社から連絡を受けた。
「対立候補は訴訟をとりやめたという通知がきました」
「はッ?」
選挙対策用の訴訟だったのだ。「本の内容については事実無根であり、いま訴訟を起こしています」と訴えることで、自らの正当性に導こうとしているようだった。
選挙にまつわるトラブルには、この種の展開が多い。
しかしミャンマー国軍は動いてしまった。ミャンマー人に訊くと多くがこういった。
「軍がクーデターというのは脅しだと思っていました」
NLDも国軍はクーデターを起こさないと読んでいた節もある。
しかし国軍はクーデターに走った。それだけ追い込まれているらしい。その話はまた追って。
■YouTubeチャンネルをつくりました。「下川裕治のアジアチャンネル」。
https://www.youtube.com/channel/UCgFhlkMPLhuTJHjpgudQphg?view_as=public
観てみてください。面白そうだったらチャンネル登録を。
■このブログ以外の連載を紹介します。
○クリックディープ旅=芭蕉の「奥の細道」を辿る旅を連載中。
○旅をせんとやうまれけむ=つい立ち止まってしまうアジアのいまを。
○アジアは今日も薄曇り=沖縄の離島のバス旅シリーズを連載中。
○タビノート=LCCを軸にした世界の飛行機搭乗記
■ツイッターは@Shimokawa_Yuji
Posted by 下川裕治 at 14:22│Comments(0)
※このブログではブログの持ち主が承認した後、コメントが反映される設定です。