2021年06月07日
愛国者理論の危うさ
6月4日、香港で天安門事件の追悼集会は開かれなかった。天安門以前から32年。香港では毎年、追悼集会が開かれていたのだが。
香港の民主主義を守る動きは、年を追って厳しい局面に立たされてきた。それを決定的にさせたのは、今年の3月、北京で開かれた全人代だった。そこで、「愛国者による香港統治」が可決された。この愛国者とは、言葉通りにとれば、香港を愛する人ということになる。しかし中国の習近平政権は、こう解釈する。
──中国共産党に反対する者は愛国者ではない。
香港は長年、その選挙制度をめぐってもめてきた。しかしここで、ある方向が示されたことになる。
──愛国者でなくては立候補することはできない。
つまり、
──中国共産党に反対する者は立候補することはできない。
ここまではっきりと中国共産党の権威主義を浮きだたされると、もうどうすることもできなくなる。
中国はここまで踏み込んでしまった。さまざまな影響が出るだろう。
中国共産党をミャンマー国軍に置き換えればいいだけのことが、今後のミャンマーで起きる気がする。
ミャンマーの国民は、国軍と中国との関係を非難している。国軍を後ろで支えているのは中国だという。
ミャンマー国軍は、昨年の選挙に不正があったと主張している。だからクーデターを起こしたのだと。そういう以上、早晩、選挙ということになる。
しかし通常の選挙をしてしまえば、アウンサン・スーチー氏が率いるNLD(国民民主連盟)が勝つことはわかっている。それは国軍も認識している。それを阻止するために、NLDを解党する。しかし政党はすぐにつくることができる。そこで中国共産党の愛国者理論をもってくる。つまり、ミャンマーの愛国者しか立候補できない選挙。その場で、ミャンマー国軍に反対する者は愛国者ではない、とするわけだ。
香港と同じ構造になる。
しかし中国共産党にしても、そこまで踏み込む以上、香港人や中国人から評価される方策は行っている。それがどんな内容であるにしろ。
だがミャンマー国軍は、国民から支持を得る必要がない。反対する国民を武力で黙らせようとする。
愛国者理論が危険なのは、ミャンマー国軍の正当化に利用できてしまうことだ。
ミャンマー国軍は当初、タイの軍事クーデターを参考にしようとしたといわれる。しかしあまりに強い国民の抵抗を前に、中国スタイルを強要された香港をテキストにしようとしている節がある。
ミャンマーの国民はそこまで読んでいたのだろうか。
■YouTube「下川裕治のアジアチャンネル」。
https://www.youtube.com/channel/UCgFhlkMPLhuTJHjpgudQphg?view_as=public
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■このブログ以外の連載を紹介します。
○クリックディープ旅=東京再発見の旅を連載中。
○旅をせんとやうまれけむ=つい立ち止まってしまうアジアのいまを。
○アジアは今日も薄曇り=コロナ禍の海外旅行を連載中。
○タビノート=LCCを軸にした世界の飛行機搭乗記
■ツイッターは@Shimokawa_Yuji
香港の民主主義を守る動きは、年を追って厳しい局面に立たされてきた。それを決定的にさせたのは、今年の3月、北京で開かれた全人代だった。そこで、「愛国者による香港統治」が可決された。この愛国者とは、言葉通りにとれば、香港を愛する人ということになる。しかし中国の習近平政権は、こう解釈する。
──中国共産党に反対する者は愛国者ではない。
香港は長年、その選挙制度をめぐってもめてきた。しかしここで、ある方向が示されたことになる。
──愛国者でなくては立候補することはできない。
つまり、
──中国共産党に反対する者は立候補することはできない。
ここまではっきりと中国共産党の権威主義を浮きだたされると、もうどうすることもできなくなる。
中国はここまで踏み込んでしまった。さまざまな影響が出るだろう。
中国共産党をミャンマー国軍に置き換えればいいだけのことが、今後のミャンマーで起きる気がする。
ミャンマーの国民は、国軍と中国との関係を非難している。国軍を後ろで支えているのは中国だという。
ミャンマー国軍は、昨年の選挙に不正があったと主張している。だからクーデターを起こしたのだと。そういう以上、早晩、選挙ということになる。
しかし通常の選挙をしてしまえば、アウンサン・スーチー氏が率いるNLD(国民民主連盟)が勝つことはわかっている。それは国軍も認識している。それを阻止するために、NLDを解党する。しかし政党はすぐにつくることができる。そこで中国共産党の愛国者理論をもってくる。つまり、ミャンマーの愛国者しか立候補できない選挙。その場で、ミャンマー国軍に反対する者は愛国者ではない、とするわけだ。
香港と同じ構造になる。
しかし中国共産党にしても、そこまで踏み込む以上、香港人や中国人から評価される方策は行っている。それがどんな内容であるにしろ。
だがミャンマー国軍は、国民から支持を得る必要がない。反対する国民を武力で黙らせようとする。
愛国者理論が危険なのは、ミャンマー国軍の正当化に利用できてしまうことだ。
ミャンマー国軍は当初、タイの軍事クーデターを参考にしようとしたといわれる。しかしあまりに強い国民の抵抗を前に、中国スタイルを強要された香港をテキストにしようとしている節がある。
ミャンマーの国民はそこまで読んでいたのだろうか。
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Posted by 下川裕治 at 14:44│Comments(1)
この記事へのコメント
ユーラシア鉄道横断買いました。企画がおもしろいし、現場感伝わってきました。10年前のですが、あせることなく新鮮なかんじ。名著だとおもいます。
Posted by にし at 2021年06月09日 14:07
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