2021年10月04日
薄気味悪い宣言の解除
今日(10月3日)の東京は、気もちのいい秋晴れだった。湿度が低く、空が高かった。
妻と娘は、北アルプスの涸沢の山小屋の予約がとれたといってでかけてしまった。僕も行こうかと思ったが、本の原稿の締め切りが迫っている。あと400字詰めの原稿用紙で50枚ぐらいだろうか。秋空を眺めながら原稿用紙を埋めていく1日である。
10月1日から東京は、緊急事態宣言が解除された。最初の週末である。天気はやけにいい。多くの人が、行動規制がなくなった開放感を味わったのだろう。飲食店の酒類などにまだ規制が残っているが、緊急事態宣言解除という言葉だけで、深呼吸をしたくなる心境といったらいいだろうか。
しかしそんな人々の心のなかは、少し複雑な気がする。緊急事態宣言の期間が長く、耐えることが日常になってきてしまったということもあるが、なぜ、こんなにも劇的に第5波が収束していったのか、誰にもわからないのだ。
専門家はワクチン、人々の感染予防、人流の抑制、医療機関や高齢者施設での感染者の減少、気象などをあげているが、どれもぴんとこない。途中の報道では人流が増えていると盛んにいっていた。もっともわかりやすいのがワクチンだが、接種率が低い国でも急激に感染者が減少した。たとえばミャンマーがその例だろうか。
そこで盛んにいわれるようになったのが、ウイルスの自壊説である。「エラー・カタストロフの限界」という考え方だ。
変異株はウイルスが増殖するときの転写ミスで生まれる。そのひとつがデルタ株だったことは皆が知っている。
デルタ株は増殖が早いことが報告されている。だから急速に感染者が増え、日本では第5波が生まれた。
しかし増殖が早いということは、転写ミスも増えることを意味している。その結果、ある割合を超えると、生存に必要な遺伝子を壊してしまうのだという。
しばらく前、東南アジアを中心に大変なことになったSARSウイルスは地球上から消えてしまった。その理由はわかっていない。世界規模で猛威をふるったスペイン風邪のウイルスも消えたが、永久凍土のなかから発掘された遺体からウイルスがみつけられた話は有名だ。つまりウイルスはパンデミックを起こして、最後には消えていくのか。
ということはデルタ株は自壊する運命を背負っていたのだろうか。
薄気味悪い世のなかだと思う。新型コロナウイルスに対して、根本的な部分での科学的な解明はない。つまりどうすればいいのか、人類は羅針盤をまだもっていない。しかしそこに緊急事態宣言といった人間がつくったルールがもち込まれ、そのさじ加減ひとつに右往左往することになる。そこからはみ出ると冷たい視線が向けられる社会がある。あるいは強い権力で抑え込み、それを社会構造の利点だと主張する。
緊急事態宣言が終わるたびに、社会の未熟さを思い知らされてしまうのだ。
■YouTube「下川裕治のアジアチャンネル」。
https://www.youtube.com/channel/UCgFhlkMPLhuTJHjpgudQphg?view_as=public
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○クリックディープ旅=コロナ禍で世界はいま……を連載中。
○旅をせんとやうまれけむ=つい立ち止まってしまうアジアのいまを。
○アジアは今日も薄曇り=コロナ禍の海外旅行を連載中。
■ツイッターは@Shimokawa_Yuji
妻と娘は、北アルプスの涸沢の山小屋の予約がとれたといってでかけてしまった。僕も行こうかと思ったが、本の原稿の締め切りが迫っている。あと400字詰めの原稿用紙で50枚ぐらいだろうか。秋空を眺めながら原稿用紙を埋めていく1日である。
10月1日から東京は、緊急事態宣言が解除された。最初の週末である。天気はやけにいい。多くの人が、行動規制がなくなった開放感を味わったのだろう。飲食店の酒類などにまだ規制が残っているが、緊急事態宣言解除という言葉だけで、深呼吸をしたくなる心境といったらいいだろうか。
しかしそんな人々の心のなかは、少し複雑な気がする。緊急事態宣言の期間が長く、耐えることが日常になってきてしまったということもあるが、なぜ、こんなにも劇的に第5波が収束していったのか、誰にもわからないのだ。
専門家はワクチン、人々の感染予防、人流の抑制、医療機関や高齢者施設での感染者の減少、気象などをあげているが、どれもぴんとこない。途中の報道では人流が増えていると盛んにいっていた。もっともわかりやすいのがワクチンだが、接種率が低い国でも急激に感染者が減少した。たとえばミャンマーがその例だろうか。
そこで盛んにいわれるようになったのが、ウイルスの自壊説である。「エラー・カタストロフの限界」という考え方だ。
変異株はウイルスが増殖するときの転写ミスで生まれる。そのひとつがデルタ株だったことは皆が知っている。
デルタ株は増殖が早いことが報告されている。だから急速に感染者が増え、日本では第5波が生まれた。
しかし増殖が早いということは、転写ミスも増えることを意味している。その結果、ある割合を超えると、生存に必要な遺伝子を壊してしまうのだという。
しばらく前、東南アジアを中心に大変なことになったSARSウイルスは地球上から消えてしまった。その理由はわかっていない。世界規模で猛威をふるったスペイン風邪のウイルスも消えたが、永久凍土のなかから発掘された遺体からウイルスがみつけられた話は有名だ。つまりウイルスはパンデミックを起こして、最後には消えていくのか。
ということはデルタ株は自壊する運命を背負っていたのだろうか。
薄気味悪い世のなかだと思う。新型コロナウイルスに対して、根本的な部分での科学的な解明はない。つまりどうすればいいのか、人類は羅針盤をまだもっていない。しかしそこに緊急事態宣言といった人間がつくったルールがもち込まれ、そのさじ加減ひとつに右往左往することになる。そこからはみ出ると冷たい視線が向けられる社会がある。あるいは強い権力で抑え込み、それを社会構造の利点だと主張する。
緊急事態宣言が終わるたびに、社会の未熟さを思い知らされてしまうのだ。
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Posted by 下川裕治 at 11:23│Comments(0)
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