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ナムジャイブログ

2021年11月08日

足がすくんでしまう

 東京の飲食店にアルコール類や時間の制限がなくなってから2週間ほどがすぎた。飲食店の経営者たちは、どんな思いで制限解除を受けとったのだろうか。しかしその後、僕の耳には悲鳴ばかりが届く。
「解除されても、すぐにはお客さんは戻ってこないでしょう」
 とテレビのインタビューに答えている経営者は多かったが、内心、息つく暇もないほど席が埋まるシーンを思い描いていたのに違いなかった。しかし本当に客が少ないようなのだ。こんな声を聞いた。
「週末はなんとか増えるんですが、平日は閑古鳥。もう東京都からの協力金もない。コロナ禍以上に不安ですよ」
「これから倒産する店が増える気がします。これまでは給付金や協力金があった。しかしもうなにもない。客がこなかったら、本当に終わりです」
 感染者が多く、病院は急増する患者にあえいでいた頃、飲食店は援助というかごのなかにいた。店を閉めても、行政から給付される資金があった。満足な額ではなかったかもしれないが、たしかな振り込みがあった。
 しかし新型コロナウイルスが収束する可能性が見えつつあるいま、飲食店は素手で闘わなくてはいけなくなった。それが元に戻るということだが、そのテンションに慣れない空気がある。
 それはマスクも同じかもしれない。東京の感染者数は30人にも満たない日々が続いていいる。東京の人口を考えれば、この状態で市中感染する可能性は限りなく低い。
 しかし電車に乗ると、全員がマスクをつけている。僕も外せない。つけていたほうが楽なのだ。マスクさえつけていれば、後ろ指をさされることもない。
「マスクをしていると楽だっていうこと、コロナ禍の時代に、皆、覚えちゃったのかもしれない。女性だったら化粧の手を抜いても大丈夫。男性もきつい視線に晒されないような安堵をマスクはもたらしてくれる」
 マスクで守られていたのだ。精神的に。
 新型コロナウイルスの感染が収束するとすれば、元の生活に戻ることを意味する。それは活気がある世界かもしれないが、ストレスフルな日常がまた戻ってくることを意味している。自宅でのテレワークも減っていく。
 それはひどくエネルギーを使う世界に映ってしまう。いまの日本人には、高度経済成長期のようなぱちぱちと弾けるように体が発するパワーがない。そういう、くだり坂の経済状況のなかでコロナ禍に巻き込まれた。もともとテンションが高くなかった人々のなかには、コロナの時代に守られ、心地よかった人もかなりいる。その保護膜が消えていってしまう。
 猛烈な物価高が世界を覆うともいわれる。胃が痛くなるようなポストコロナの時代が待っている。その前で、僕も足がすくんでしまう。

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Posted by 下川裕治 at 11:37│Comments(0)
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