2022年05月09日
予約をすると沖縄に出合えない
北海道から沖縄……と歩いた。北海道は家族と一緒だった。登別、札幌、小樽という気軽なコースだった。札幌の夜、小樽の昼食の店は娘たちが予約をとった。彼女たちは店のめぼしがつくと、その先に予約という流れは自然で、スマホを使ってなんの抵抗もなく予約をとっていく。
僕らの世代といまの若者の違いだ。僕は予約というと、事前に準備をした特別な食事といったイメージに傾いてしまうが、いまの若者の予約への垣根は低い。店の混みぐあいにかかわらず、まず予約なのだ。
沖縄では宮古島と来間島の間に架けられた来間大橋を渡った。ライブ配信もした。
https://twitcasting.tv/c:shimokawayuji/shopcart/154068
「晴れた日は沖縄の来間大橋を渡ろう」というタイトルだったが、その前日、宮古島地方は梅雨に入ってしまった。
橋の渡り口からライブがはじまったが、そのとき、雨はまだ小康状態だった。長さが1600メートルほどの橋だったが、途中で雨が激しくなった。橋の上は風も強い。晴れれば翡翠色の海が橋から眺められるはずだが、白波が立つ荒れようで、橋の上にいる僕らは雨と風に吹かれ、ずぶぬれ。観ている人をはらはらさせるようなライブになってしまった。ほうほうの体で来間島に渡った。
ライブが終わり、沖縄そばで体を温めたかった。
前夜、知人から、「来間島においしいそば屋ができた」という話を聞いた。そこに行ってみることにした。入口で、「ちょっと待ってください」といわれた。5分ほど待っただろうか。まだ若い主人らしき人がノートを片手にやってきた。
「いま予約が9組入っているんです」
見ると名前の横に携帯電話の番号が書き込まれていた。席が空いたら電話で呼ぶ。それまで雨のなか、レンタカーのなかで待っているようだった。きっとこの店はネットで検索するとすぐに出てくるレベルの店のようだった。当然、予約が中心になる。
諦めて雨の来間島を歩く。1軒の食堂が目に入った。しかし準備中という表示。しかし宮古島周辺では、準備中という看板が出ていても、店に入れてくれることがよくあった。
それを思い出し、戸を開けてみた。来間島に住んでいるような女性と幼い娘さんがそばを啜っていた。訊くと、「大丈夫だと思いますよ」という返事。
店に入ると厨房からオバァが出てきた。
「できるのはカレーとそばだけだけど」
カレーはメニューになかった。
沖縄の離島が伝ってきた。
僕はそばを頼んだ。食べはじめると、オバァがやってきた。用事があるから出かけるという。代金を払うと、オバァは厨房の電気を消し、どこかに行ってしまった。
店には僕と同行するカメラマンが残されてしまった。
食べ終わり、店を出ようとした。テレビぐらい消そうと思ったがリモコンがみつからない……。
僕は沖縄の離島の食堂にいた。おそらく予約で埋まる店に入ったら、こうはならなかっただろう。
僕はこれまで、こういう店に予約をせずに入り、沖縄を書いてきた。それはもはや、昔の沖縄かもしれない。しかし僕にとっての沖縄はこういう店である。その境界がいまは予約ということのようだった。
予約をすると沖縄に出合うことができない──。それは僕にとっての沖縄なのだが。
■YouTube「下川裕治のアジアチャンネル」。
https://www.youtube.com/channel/UCgFhlkMPLhuTJHjpgudQphg?view_as=public?
面白そうだったらチャンネル登録を。
■noteでクリックディープ旅などを連載。
https://note.com/shimokawa_note/。
○旅をせんとやうまれけむ=つい立ち止まってしまうアジアのいまを。
○アジアは今日も薄曇り=コロナ禍の海外旅行を連載中。
■ツイッターは@Shimokawa_Yuji
僕らの世代といまの若者の違いだ。僕は予約というと、事前に準備をした特別な食事といったイメージに傾いてしまうが、いまの若者の予約への垣根は低い。店の混みぐあいにかかわらず、まず予約なのだ。
沖縄では宮古島と来間島の間に架けられた来間大橋を渡った。ライブ配信もした。
https://twitcasting.tv/c:shimokawayuji/shopcart/154068
「晴れた日は沖縄の来間大橋を渡ろう」というタイトルだったが、その前日、宮古島地方は梅雨に入ってしまった。
橋の渡り口からライブがはじまったが、そのとき、雨はまだ小康状態だった。長さが1600メートルほどの橋だったが、途中で雨が激しくなった。橋の上は風も強い。晴れれば翡翠色の海が橋から眺められるはずだが、白波が立つ荒れようで、橋の上にいる僕らは雨と風に吹かれ、ずぶぬれ。観ている人をはらはらさせるようなライブになってしまった。ほうほうの体で来間島に渡った。
ライブが終わり、沖縄そばで体を温めたかった。
前夜、知人から、「来間島においしいそば屋ができた」という話を聞いた。そこに行ってみることにした。入口で、「ちょっと待ってください」といわれた。5分ほど待っただろうか。まだ若い主人らしき人がノートを片手にやってきた。
「いま予約が9組入っているんです」
見ると名前の横に携帯電話の番号が書き込まれていた。席が空いたら電話で呼ぶ。それまで雨のなか、レンタカーのなかで待っているようだった。きっとこの店はネットで検索するとすぐに出てくるレベルの店のようだった。当然、予約が中心になる。
諦めて雨の来間島を歩く。1軒の食堂が目に入った。しかし準備中という表示。しかし宮古島周辺では、準備中という看板が出ていても、店に入れてくれることがよくあった。
それを思い出し、戸を開けてみた。来間島に住んでいるような女性と幼い娘さんがそばを啜っていた。訊くと、「大丈夫だと思いますよ」という返事。
店に入ると厨房からオバァが出てきた。
「できるのはカレーとそばだけだけど」
カレーはメニューになかった。
沖縄の離島が伝ってきた。
僕はそばを頼んだ。食べはじめると、オバァがやってきた。用事があるから出かけるという。代金を払うと、オバァは厨房の電気を消し、どこかに行ってしまった。
店には僕と同行するカメラマンが残されてしまった。
食べ終わり、店を出ようとした。テレビぐらい消そうと思ったがリモコンがみつからない……。
僕は沖縄の離島の食堂にいた。おそらく予約で埋まる店に入ったら、こうはならなかっただろう。
僕はこれまで、こういう店に予約をせずに入り、沖縄を書いてきた。それはもはや、昔の沖縄かもしれない。しかし僕にとっての沖縄はこういう店である。その境界がいまは予約ということのようだった。
予約をすると沖縄に出合うことができない──。それは僕にとっての沖縄なのだが。
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Posted by 下川裕治 at 11:27│Comments(0)
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