2022年11月21日
ポストコロナで、旅への優しさが消えた?
旅のポストコロナ……。旅は新型コロナウイルスの影響を強く受けたから、ポストコロナとは、「旅ができること」といい換えてもいい気がする。しかし現実の旅はそう簡単なものではない。
『歩くバンコク』をつくるために、しばらくバンコクに滞在していた。タイのホテル業界が口にするこんな愚痴を耳にした。
「せっかくスタッフをそろえたというのに、日本人観光客がやってこない」
アジアの観光地はどこもこの傾向があるようだ。ほかの国に比べ、日本人観光客の回復速度が遅いという。その理由をある日本人はこういう。
「日本人のなかには、パスポートの有効期限がコロナ禍の間に切れてしまった人が少なからずいる。パスポートって、一度、期限が切れてしまうと、つくるときの必要書類が増えるんです。継続に比べてね。それに1万円から2万円ぐらいの費用がかかる。いざ、海外に行こうとすると、そこからスタートなんですよ」
年に1~2回といった海外旅行のサイクルが途絶えてしまうと、なかなか元に戻らない理由のひとつがパスポートだというのだ。
またある人は、ポストコロナの旅行手つづきをやり玉にあげる。
「いくつかの国が、ネットでの事前登録制をとり入れたんです。パスポート情報とか、ワクチン接種記録とかをね。その多くがスマホで操作することになる。そこで旅を諦めてしまうシニア層がかなりいるって話です」
新型コロナウイルスがまだ勢いを保っていた頃、海外に出るためには、さまざまな書類が必要だった。PCR検査の陰性証明、ワクチン接種証明、感染した人は罹患証明……。それらをとり込むアプリが登場し、海外に出るときは、それをダウンロードし、書類をとり込み、必要事項を入力していくという作業が必要だった。スマホがない人や、そもそもネットとは無縁の生活をしている人はどうするのか……という議論が一時あった。しかし感染が拡大するなかでのドタバタした状況がつづき、そんな人たちはネット弱者になってしまった。
しかし入国管理の世界では別の文脈が働いていた。
「多くの人がスマホで対応してきている。ポストコロナになっても、パスポート情報などをこの方法でとり込めば、入国審査はかなり楽になる」
日本のヴィジットジャパンウエブもこの流れにある気がする。先日、タイから帰るときにこのシステムを使った。運用がはじまって間がないためなのかもしれないが、途中まで進んだところで、突然、よくわからないQRコードが出てきてしまい、かなり悩んだ。
日本に住む台湾人女性から、こんな話も聞いた。
「両親は日本に遊びに来たいんだけど、ネックはヴィジットジャパンウェブ。70歳を超えた両親はたぶん自分では登録できない。私が台湾に戻ったときにやってあげないといけないと思う」
コロナ禍の間に、旅への優しさがそがれてしまった気がしなくもない。
■YouTube「下川裕治のアジアチャンネル」。
https://www.youtube.com/channel/UCgFhlkMPLhuTJHjpgudQphg
面白そうだったらチャンネル登録を。
■noteでクリックディープ旅などを連載。
https://note.com/shimokawa_note/。
○旅をせんとやうまれけむ=つい立ち止まってしまうアジアのいまを。
○アジアは今日も薄曇り=コロナ禍の海外旅行を連載中。
■ツイッターは@Shimokawa_Yuji
『歩くバンコク』をつくるために、しばらくバンコクに滞在していた。タイのホテル業界が口にするこんな愚痴を耳にした。
「せっかくスタッフをそろえたというのに、日本人観光客がやってこない」
アジアの観光地はどこもこの傾向があるようだ。ほかの国に比べ、日本人観光客の回復速度が遅いという。その理由をある日本人はこういう。
「日本人のなかには、パスポートの有効期限がコロナ禍の間に切れてしまった人が少なからずいる。パスポートって、一度、期限が切れてしまうと、つくるときの必要書類が増えるんです。継続に比べてね。それに1万円から2万円ぐらいの費用がかかる。いざ、海外に行こうとすると、そこからスタートなんですよ」
年に1~2回といった海外旅行のサイクルが途絶えてしまうと、なかなか元に戻らない理由のひとつがパスポートだというのだ。
またある人は、ポストコロナの旅行手つづきをやり玉にあげる。
「いくつかの国が、ネットでの事前登録制をとり入れたんです。パスポート情報とか、ワクチン接種記録とかをね。その多くがスマホで操作することになる。そこで旅を諦めてしまうシニア層がかなりいるって話です」
新型コロナウイルスがまだ勢いを保っていた頃、海外に出るためには、さまざまな書類が必要だった。PCR検査の陰性証明、ワクチン接種証明、感染した人は罹患証明……。それらをとり込むアプリが登場し、海外に出るときは、それをダウンロードし、書類をとり込み、必要事項を入力していくという作業が必要だった。スマホがない人や、そもそもネットとは無縁の生活をしている人はどうするのか……という議論が一時あった。しかし感染が拡大するなかでのドタバタした状況がつづき、そんな人たちはネット弱者になってしまった。
しかし入国管理の世界では別の文脈が働いていた。
「多くの人がスマホで対応してきている。ポストコロナになっても、パスポート情報などをこの方法でとり込めば、入国審査はかなり楽になる」
日本のヴィジットジャパンウエブもこの流れにある気がする。先日、タイから帰るときにこのシステムを使った。運用がはじまって間がないためなのかもしれないが、途中まで進んだところで、突然、よくわからないQRコードが出てきてしまい、かなり悩んだ。
日本に住む台湾人女性から、こんな話も聞いた。
「両親は日本に遊びに来たいんだけど、ネックはヴィジットジャパンウェブ。70歳を超えた両親はたぶん自分では登録できない。私が台湾に戻ったときにやってあげないといけないと思う」
コロナ禍の間に、旅への優しさがそがれてしまった気がしなくもない。
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Posted by 下川裕治 at 11:16│Comments(0)
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