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ナムジャイブログ

2023年02月20日

収容所には貧困が寄り添っている

 フィリピンの入国管理施設に収容されていた特殊詐欺グループ事件が、いまだに日本をにぎわせている。彼らは収容所内から指示を出していた可能性が高い。日本人からすれば、「そんなことができるのか」といった感覚が、事件への関心を膨らませている。
 僕の周りには、フィリピンや不法滞在をめぐる取材をしてきた知人が多い。彼らの署名記事を目にすることが多くなった。
 かくいう僕も記事を書いた。たまたま、去年、カンボジアの施設に収容されていた人から話を聞くことができた。
 日本人のなかには、収容所と刑務所を混同している人がいるが、収容所というのは本来、強制送還前に一時的に収容する場所。なかにいるのは不法滞在や観光ビザで働いていたなどといった人たちが多い。たしかに法律違反だが、窃盗や殺人といった犯罪とは違う。
 昨夜も収容所の取材をつづけていた記者と会ったが、彼も僕と共通した思いを抱いていた。収容所が抱えるいちばんの問題は、今回のような詐欺グループの存在ではない。強制送還させられたら路頭に迷ってしまうような人が多く収容されていることだ。そこには貧困が横たわっている。
 たとえば家族や親戚との関係を断ってしまい、帰国しても行き場がない人たち。病気などで仕事ができない人。あるいは難民……。皆、さまざまな問題を抱えている。本来、そういう人たちを想定した施設ではないため、綻びがでてくる。日本の入国管理施設も同様だ。
 フィリピンで取材をしてきた知人のひとりがこんな話をしていた。
「日本の警察の圧力がフィリピンに及んでくることを彼らはわかっていたと思う。その前に収容所、いやフィリピンから脱出しようとしていた動きがあるんです。強制送還になれば逮捕されますからね。そのためにはかなりの金がいる。振り込め詐欺から強盗にエスカレートさせていったのは、そのためじゃないかと」
 彼らの行動を見ると、ひと時代前のフィリピンを思い出す。カラオケクラブなどで派手に遊んでいた話を見聞きすると、20年前、フィリピンにでかけていったヤクザとだぶってしまう。しかしヤクザも進化する。フロント企業はなかなか表に出てこない。しかし今回のグループは、まるでフィリピン暮らしを謳歌するかのような振る舞いなのだ。目立てば当然、日本の警察に情報は伝わる。
 フィリピンに詳しい記者も同じ感想を抱いていた。今回の詐欺グループの行動は、はかなり甘い……。知人のひとりがこんな話をしてくれた。
「闇バイトの募集がこんなにうまくいくとは思っていなかった節があるんです。ネットで募集すると、さっと集まる。日本はどうなってるんだ、とひとりが漏らしていたっていう噂もある」
 彼らはどのくらい日本に帰っていないかわからないが、少なくとも2019年の大規模な摘発以降は日本に帰ることはできなかった。その間に、日本の貧困はさらに深みにはまっていったのか。彼らの犯罪を、日本の貧困が拡大させていったと見ることもできる。
 収容所の周りにはいつも貧困が寄り添っているということか。


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Posted by 下川裕治 at 11:22│Comments(0)
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