2023年05月15日
「在留資格認定証明書」に募る虚しさ
入国管理局、正式には東京出入国在留管理局から、ミャンマー人僧侶の「在留資格認定証明書」が送られてきた。申請を出したのが昨年の12月のこと。5ヵ月かかって、ようやく……である。
東京の巣鴨にミャンマー人、とくにラカイン人を中心にした寺の設立にかかわった。日本では小乗仏教とも呼ばれてテラワーダを信仰する彼らにとって、仏教寺院はなくてはならない存在だ。加えていまのミャンマー情勢である。帰国できない人も多い。ミャンマーにいる若者たちは、軍事政権で将来への夢を失い、日本に未来を求める人も多い。彼らはさまざまな手段で日本にやってくる。そんなミャンマー人を支えるためにも、寺は欠かせない存在だった。
寺である以上、そこには僧侶がいなくてはならない。日本に駐在する僧侶のビザを申請したのだが……。
さまざまな書類を用意した。そして品川駅から都バスで入国管理局に向かった。
アジア人とかかわりが深いから、入国管理局を訪ねることは多い。コロナ禍の時期は建物へ入るにも制限があり、入口前の歩道にできた長い列に何回も並んだ。ミャンマー人僧侶のビザを申請した時期は、新型コロナウイルスの嵐も弱まり、建物への入場制限はなくなっていた。
しかしビザ審査が甘くなったわけではない。まず窓口で必要書類のチェックがある。その順番がまわってくるまで2時間。半日はかかる覚悟で向かわなくてはならない。受理された後、審査がはじまる。
1ヵ月がたった頃だろうか。入国管理局から手紙が届いた。寺にあたる施設や活動の説明を写真と一緒に提出する指示だった。写真は撮影日時がわかるものという注意書きが書かれていた。
説明書類はすでに提出している。再度つくれということらしい。撮影日時がわかる写真? どうすればいいのかわからず、入国管理局に電話を入れる。しかし常に話し中。しかたなく当日の新聞と一緒に写真を撮った。
そして再び入国管理局へ。順番待ちの長い時間をすごし、窓口へ。職員に訊いてみた。
「撮影日時のわかる写真ってどう撮るんですか」
すると職員はこういった。
「私だったらそんな指示は出しませんね」
それから約1ヵ月。再び手紙。僧侶の滞在費の負担の説明と活動内容。すでに提出しているが、さらに詳しく書けということか。困って手紙に書かれた連絡先に電話をかけると、「この電話は使われていません」というアナウンス。溜め息が出てしまった。
こんなことを何回も繰り返す。審査をする適切な材料がなく、重箱の隅をつつくような要求がつづく。提出までの期限も短くなる。どこか音をあげることを狙っているかのように思えてくる。
日本の入国審査はこうなのか……と天を仰ぎたくなる。意味のない要求に淡々と答えていく日々。虚しい時間の先にようやく許可がおりる。
届いた「在留資格認定証明書」。周囲からは、「よくとれましたね」といわれる。しかしその書類を眺めるたびに虚しさが募ってしまう。
■YouTube「下川裕治のアジアチャンネル」。
https://www.youtube.com/channel/UCgFhlkMPLhuTJHjpgudQphg
面白そうだったらチャンネル登録を。。
■ツイッターは@Shimokawa_Yuji
東京の巣鴨にミャンマー人、とくにラカイン人を中心にした寺の設立にかかわった。日本では小乗仏教とも呼ばれてテラワーダを信仰する彼らにとって、仏教寺院はなくてはならない存在だ。加えていまのミャンマー情勢である。帰国できない人も多い。ミャンマーにいる若者たちは、軍事政権で将来への夢を失い、日本に未来を求める人も多い。彼らはさまざまな手段で日本にやってくる。そんなミャンマー人を支えるためにも、寺は欠かせない存在だった。
寺である以上、そこには僧侶がいなくてはならない。日本に駐在する僧侶のビザを申請したのだが……。
さまざまな書類を用意した。そして品川駅から都バスで入国管理局に向かった。
アジア人とかかわりが深いから、入国管理局を訪ねることは多い。コロナ禍の時期は建物へ入るにも制限があり、入口前の歩道にできた長い列に何回も並んだ。ミャンマー人僧侶のビザを申請した時期は、新型コロナウイルスの嵐も弱まり、建物への入場制限はなくなっていた。
しかしビザ審査が甘くなったわけではない。まず窓口で必要書類のチェックがある。その順番がまわってくるまで2時間。半日はかかる覚悟で向かわなくてはならない。受理された後、審査がはじまる。
1ヵ月がたった頃だろうか。入国管理局から手紙が届いた。寺にあたる施設や活動の説明を写真と一緒に提出する指示だった。写真は撮影日時がわかるものという注意書きが書かれていた。
説明書類はすでに提出している。再度つくれということらしい。撮影日時がわかる写真? どうすればいいのかわからず、入国管理局に電話を入れる。しかし常に話し中。しかたなく当日の新聞と一緒に写真を撮った。
そして再び入国管理局へ。順番待ちの長い時間をすごし、窓口へ。職員に訊いてみた。
「撮影日時のわかる写真ってどう撮るんですか」
すると職員はこういった。
「私だったらそんな指示は出しませんね」
それから約1ヵ月。再び手紙。僧侶の滞在費の負担の説明と活動内容。すでに提出しているが、さらに詳しく書けということか。困って手紙に書かれた連絡先に電話をかけると、「この電話は使われていません」というアナウンス。溜め息が出てしまった。
こんなことを何回も繰り返す。審査をする適切な材料がなく、重箱の隅をつつくような要求がつづく。提出までの期限も短くなる。どこか音をあげることを狙っているかのように思えてくる。
日本の入国審査はこうなのか……と天を仰ぎたくなる。意味のない要求に淡々と答えていく日々。虚しい時間の先にようやく許可がおりる。
届いた「在留資格認定証明書」。周囲からは、「よくとれましたね」といわれる。しかしその書類を眺めるたびに虚しさが募ってしまう。
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Posted by 下川裕治 at 11:22│Comments(1)
この記事へのコメント
下川先生のラジオ番組5月放送日が近づいているので楽しみです(^_^)
(2023年5月17日)
(2023年5月17日)
Posted by マロンクリーム at 2023年05月17日 20:53
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