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ナムジャイブログ

2011年10月17日

チャオプラヤーの水が流れるつくところ

水没が心配されるバンコクでこの原稿を書いている。今年のインドシナは、水害にあえいでいる。水没したアユタヤの映像は、世界に流れている。バンコクのビルや商店では土嚢の積みあげがはじまっていた。スワンナプーム空港も水没するという噂も流れている。
4日前。カンボジアに向かった。かなりのエリアが水没していた。上空から眺めたカンボジア平原は、まるで巨大な湖だった。どこがメコン川なのか、シュムリアップ川なのか、判別もつかない。
しかし飛行機は、なにもなかったかのように空港に到着した。
空港からトゥクトゥクで市内に向かった。重い雨が降ってきた。ところどころ道路が冠水しているが、それほどの量ではない。渋滞は起きていたが、街は賑わっていた。
「プノンペンは大丈夫。その代わり、シュムリアップが大変さ。メコン川の水が逆流しているからね」
プノンペンで会った青年は、平然とした面持ちでいった。心配そうにアユタヤの映像を見つめるバンコクっ子とはずいぶん違った。
アンコールワットに近いシュムリアップはトンレサップ湖に面していた。増水したメコン川の水はいま、この湖に流れ込んでいる。湖は日を追って大きくなり、シュムリアップの街も飲み込む勢いである。しかしそのおかげで、プノンペンが守られる。トンレサップ湖は、プノンペンの安全弁のような役割を果たしていた。
カンボジアの人々は、洪水に見舞われる土地を経験的に知っている。安全な土地にプノンペンがつくられたのだ。
プノンペンに着いた翌日、水没した田舎に出かけた。腰下まで水に浸かって、一軒の家を訪ねた。高床式のその家は、床上までは浸水していなかった。周りの家も、とりたて問題はない。家からの出入りが舟になるだけだった。このエリアには何回か訪ねているが、高床の高さが、タイのそれより高かった。そう、1・5倍は高いだろうか。おそらくこれも、経験的に導き出されたものに違いなかった。過去の水害が、高床の高さを決めていたのだ。
バンコクには、トンレサップ湖のような湖がない。かつて、水が流れ込んだバンナーやその先の湿地は、工場や空港になってしまった。おそらくバンコクという街も、経験的に導かれた安全なエリアがあったのだろう。しかし人が集まり、街は巨大化していった。自然の摂理を無視して街を大きくするしか方法はなかったのだろう。
バンコクに水が入るとすれば、それは人災ともいえるのだ。
その街の一画のビルのなかで、この原稿を書いている。インドシナを流れる水は、結局、現代が抱える問題に流れ着いてしまう。



Posted by 下川裕治 at 12:54│Comments(2)
この記事へのコメント
下川様、アラックです。
そうなんですか、人災なんですか。
でも、人は都市に集中しますね、東京は災害があれば大正の地震の比ではない被害になりますね。
Posted by アラック at 2011年10月22日 06:19
遊水地という意味では,明示の所期に設置された渡良瀬川の遊水地を思い出します.トンレサップ湖ではなく人工的に作られたものです.これで東京が救われています.今,思いついたのですが京都南方にあった巨椋(オグラ)池が,ウヤムヤのうちに埋め立てられてしまいましたね.
Posted by maijuneaug at 2011年11月21日 00:33
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