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ナムジャイブログ

2012年04月02日

窓のない部屋に泊まる

 部屋を飾るもの……考えてみると、いままで人生で1回も買ったことがない。絵はもちろん、壁掛け、置物……やはりなにもない。いま、原稿を書いている部屋を眺めてみるが、やはりない。いくつかの本棚の間に、もらったカレンダーが掲げてあるだけだ。日本画が2枚あるが、これもいただいたものだ。
 部屋を飾る……。おそらく僕は、これまでの人生で、1回も考えてこなかったのだろう。なんだか寂しくなってくる。
 東京駅に近い東京国際フォーラムで開かれた『アートフェア東京2012』にでかけた。これは日本のギャラリーや画商が集まり、自分がかかえる作家の作品を展示し、販売していくイベントである。世界的にこの種のイベントが盛況なのだという。
 点在するギャラリーをまわるのは大変なことだ。それが一同に集まるわけだから、人気が集まるのも頷ける。
 しかし1点10万円を超えるような絵画などのアートである。ギャラリーがいつも閑散としているように、一部のコレクターがやってくる場所だと思っていた。
 しかしその入り口の立って戸惑った。大変な人なのだ。入場制限が起きるほどで、
「最後尾はこちらです」
 という係員の声が響いていた。
 そこに並ぶのは、白髪が目立つようなコレクターではなかった。ごく普通の日本人たちなのである。それも無料ではない。当日券は2000円もする。
 ここに作品を展示している作家に訊くと、若い人の多くは、芸術大学の学生ではないかという。しかしそれ以外の人は、気に入った作品があれば買いたいと思っている人らしい。
 おそらくその感覚が普通なのだろう。僕のようにインテリアにはまったく関心がない人間のほうが少数派なのだ。
 海外のホテルに泊まることが多い。バックパッカーのように旅をしてきたから、かなりひどい部屋でも寝ることはできる。きっとはじめの頃は、僕にも部屋へのこだわりがあったのかもしれないが、こういう旅をするうちに、許容範囲はめちゃくちゃ広くなってしまった。それができるのも、きっと、部屋というものへのこだわりが少ないタイプだからなのだろう。
 しかしちょっと避けたい部屋もある。それは窓のない部屋だ。中国や台湾のホテルでときどきでくわす。中国では最近、チェーンホテルが急増している。そのなかで、いちばん安い部屋を選ぶと、ときに窓がない。
 あれだけ広い国土をもっているというのに、平気で窓なし部屋を設計してしまう。
 しかしそんな部屋になっても、追加料金を払って、部屋を変えてもらうことはない。
「次にくるときには別の部屋にするか」
 とその部屋で寝てしまう。こうして僕の部屋への許容範囲は、また広がっていく。



Posted by 下川裕治 at 10:29│Comments(1)
この記事へのコメント
下川様
はじめまして。
タイ在住の池田と申します。
下川さんの著書はいつも楽しく読ませていただいております。
「この記事への」ではないのですが、貴著「タイ語の本音」について気になっていることをお伝えいたしたく。
すでにどなたかからご指摘があったかも知れませんが、同書単行本(2月19日発行)の中にタイ文字表記が間違っていると思われるものがありました。
114ページ/キッ(ク)
170ページ/チューレン
192ページ/レーオテー
213ページ/マイキッ(ト)ディークワー
278ページ/チン(グ)チン(グ)
280ページ/チェックビンデュアイ
上のうち、チン(グ)チン(グ)が省略記号と反復記号の誤りである以外は、声調記号の種類または位置が違うのではないか、と思います。
瑣末なことで、これで貴著の値打ちが下がっているとは全く思いませんが、増刷されるときにでも見直してみてはいかがかと存じます。
以上大きなお世話的なコメントでした。
Posted by 池田等 at 2012年04月07日 10:39
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