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ナムジャイブログ

2020年08月03日

李登輝というバランサー

 李登輝が亡くなった。日本の支配が終わった後の台湾を、民主的な世界に導いた功績は皆が認める。
 翌朝の朝日新聞に載った、早稲田大学名誉教授の若林正丈氏の寄稿が興味深かった。李登輝は生前、「私はバランサーである」と語っていたというのだ。バランサーとはその言葉通り、バランスをとる人である。
 寄稿のなかで、「李登輝サダト論」を紹介している。古い話だが、エジプトのナセル大統領時代、存在感が薄かったサダトが、ナセルの死後、大統領になると、強力なリーダーシップを発揮した話だ。李登輝をサダトに重ねている。
 台湾から日本が去った後、大陸で共産党のと内戦に敗れた国民党がやってくる。大陸からやってきた国民党系の人々は外省人、もともと台湾にいた人は本省人という構造ができあがる。国民党に反発する本省人が起こした暴動が二・二八事件である。この事件への国民党の弾圧が白色テロへとつながっていく。
 白色テロは、反発する本省人を共産党のスパイ容疑などを理由に逮捕し、緑島などにあった刑務所に送った弾圧である。その犠牲者は万単位といわれる。ある台湾人は100万人ともいうが。
 国民党を率いたのは蒋介石だった。そして総統は息子の蒋経国に引き継がれる。その蒋経国は、李登輝を副総統に任命する。
 李登輝は国民党に属していたのだ。そして蒋経国が死亡し、李登輝は総統になる。
 それまで、どちらかというと実務派だった彼が、一気に政治家になり、総統直接選挙を実現させてしまうのだ。
 国民党内にいて、このときを、虎視眈々と狙っていたというストーリーを描けないわけではない。しかし彼が自身をバランサーだというのだ。
 彼は的確に風を読んだのだ。国民党内の足並みの乱れ、抑圧された本省人たちの反発エネルギー、そして世界からの評価……。その空気のなかで民主主義政策が確実に支持されると……。そして本省人の李登輝が総統になる。台湾の無血革命ともいわれる経緯が少し見えてくる。
 こういう政治家はいる。体制内にいながらそのトップになると、旧体制の崩壊を招きかねない変革をリードする政治家たちだ。ロシアのゴルバチョフ、ミャンマーのテイン・セイン……。旧体制内では、「典型的なイエスマン」などといわれた人物が豹変したかのようない改革に着手する。
 彼らに共通するのは、信念の人というよりバランス感覚に優れた政治家ということだろう。
 アジアでそんなバランサーが出てくる国?
 フン・セン後のカンボジア? ひょっとしたら習近平後の中国? とすれば、いまの中国共産党のなかにバランサーがいる? 

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Posted by 下川裕治 at 13:09Comments(1)

2020年08月03日

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Posted by 下川裕治 at 12:25Comments(0)