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ナムジャイブログ

2015年03月16日

東南アジアの風はやはり甘い?

 僕が編集を担当した『本社はわかってくれない』という新書が、講談社現代新書から発売になる。副題は、「東南アジア駐在員はつらいよ」。東南アジアで働く日本人が遭遇したさまざまな話を紹介した。
 舞台はタイ、ベトナム、マレーシア、カンボジア、ラオス、フィリピン、ミャンマーなど。それぞれの国で原稿を書いている知人に依頼し、僕がまとめる形をとった。
「すぐ休む人々」、「働かない人々」、「会社を私物化する人々」、「身勝手な人々」……。そんな章タイトルをつけた。東南アジアで働く人や、東南アジアに仕事でかかわったことがある人ならピンとくるかもしれない。
 企画は東南アジアで原稿を書いたり、出版にかかわっている人たちとの話のなかから生まれた。
 日本企業の海外での一大拠点は、中国である。上海や大連がその中心になる。しかし中国の賃金があがるだけでなく、中国という国とのトラブルや感情が重なり、中国だけに頼るのはリスクがある……という発想が生まれてきた。「チャイナ・プラス・ワン」と呼ばれるものだ。そこで東南アジアに進出する日系企業が急増していく。
 しかし東南アジアには、また別の問題が待っていた。
 たとえばラオス。部下を通訳として同伴して出張しようとしたところ「ホテルの部屋にひとりで泊まるのは嫌」といわれてしまう。部屋でひとり、寝たことがなかったのだ。
 たとえばカンボジア。浮気をした社員の奥さんが、包丁を手に乗り込んでくるシーンに日本人が遭遇する。
 タイでは優秀なオカマ社員を目にした本社の役員が、「辞めさせるべきだ」と駐在員に伝えた話……。
 かかわった日本人は、本社との間に立って悩むことになる。
 この本で紹介している話のなかには、中国でも起きていただろうと思うものもある。しかし、東南アジアの風に晒されると、どこか気が抜けてしまうというか、笑ってしまう結末に向かうことが多い。そこが中国との違いのような気がする。
 僕自身がそうなのだが、中国人と向かい合うと、どこか対抗するような意識が生まれてきてしまう。けんか腰とはいわないが、笑ってすますようなことになかなかならない。
 3日前までソウルにいたのだが、明洞を埋める中国人観光客のパワーを目の当たりにすると、こちらもしっかりしなくては……と思ってしまうのだ。
 中国は日本の隣国である。その間にあるものは、どこかぎすぎすしている。しかし東南アジアとの間に流れる風は、どこか甘いにおいがする。
 仕事となれば、そんな感情も許されないだろうが、やはり東南アジアなのだ。読み返してみると、改めてその思いに駆られるのである。



Posted by 下川裕治 at 13:09│Comments(1)
この記事へのコメント
僕自身がそうなのだが、中国人と向かい合うと、どこか対抗するような意識が生まれてきてしまう。けんか腰とはいわないが、笑ってすますようなことになかなかならない。--------------这样双重标准double standard可不好啊,大叔。
Posted by ray at 2015年12月25日 23:42
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