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ナムジャイブログ

2011年07月04日

安曇野の湧き水に反応する体

 おいしい湧き水を飲んだ。
 いま、信州の安曇野の実家にいる。母がひとり暮らしのため、ときどき帰省する。
 近くに話題の水があると聞いて、ペットボトル持参で飲みにいった。開運堂という和菓子屋の入り口の湧き水である。
 安曇野は水に恵まれた盆地である。北アルプスの雪解け水が伏流水になり、安曇野のそこかしこで湧き出る。わさびの栽培も、この水を使っている。
 湧き出る水を口に含んだとき、体のなかのある回路がつながったような気がした。体がとろけそうになった。その水はやわらかった。喉にひっかかるところがないもない。水道水や一般的なミネラルウォーターのような刺々しさがない。
 水がすんなりと喉を通っていく感覚……。グルジアを思い出していた。
 昨年のことだ。首都のトビリシからトルコに向けて、乗り合いバスに揺られていた。道はやがて木々が色づいた谷あいを走り、川に沿った店の前で停まった。トイレ休憩のようだった。
 ぎゅう詰めの車内から解放され、腰を伸ばした。見ると、そこに水が湧き出ていた。乗客は皆、その水を飲む。僕もその水を両手ですくって飲んでみた。みごとなほどにやわらかい水だった。体が反応しているのがよくわかった。
 僕の体は、このやわらかい水を吸い込んでつくられたのかもしれない……。そんな気がした。湧き水の成分に反応する酵素をもっているかのような気がしたのだ。
 さまざまな国を訪ねるから、飲んだ湧き水の種類は多い。中央アジアのシルクロードも湧き水地帯である。天山山脈の水が伏流水になって湧出し、オアシスをつくる。
 その水も何回か飲んだ。おいしいのだが、体が反応するやわらかさがない。清涼だが、体に届くものがない。
 それは伏流水が流れ下る環境なのかもしれなかった。安曇野やグルジアは、木々に覆われた山の土のなかを流れてくる。広葉樹も多い。そんな樹木や落ち葉からにじみ出る有機物が、水をやわらかくしているのかもしれなかった。
 それに比べると、中央アジアは乾燥地帯である。伏流水が流れ下る一帯に木々は少ない。水にミネラルは多いのかもしれないが、有機物を含んだ丸みが加わらない気もした。
 人の味覚は、どういうシステムで決まっていくのかはわからない。科学的にも解明されてはいないだろう。だから勝手な想像力の世界に遊ぶことになるのだが、やはり水にはなにかがあるような気がするのだ。
 湧き水を飲みながら旅をする……。
 安曇野の湧き水を飲みながら、そんなことを考えていた。


Posted by 下川裕治 at 10:12│Comments(1)
この記事へのコメント
安曇野在住の者です。
平安堂で「生き場を探す日本人」を購入して今読んでいます。

安曇野の水は美味しいですよね。
豊饒な湧き水に恵まれた土地であることを実感します。
Posted by masa at 2011年07月05日 00:45
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