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ナムジャイブログ

2019年06月03日

麺抜きでお願いします

 タイ人はそれほど麺というものが好きではないのかもしれない。最近、ときどきそう思うことがある。
 先日、知人の日本人とバンコクの食堂に入った。カオカームーという豚足料理の店だ。そこにはクイッティオという麺もあった。知人の会社で働くタイ人女性も一緒だった。彼女は麺を頼んだ。しかし麺を啜ろうとはしなかった。載っている具だけを食べている。糖質ダイエットかとも思った。
「麺は食べないの?」
 知人が訊いた。
「朝、しっかり食べちゃったから。それにもともと麺はあまり好きじゃないから」
 知人はちょっとむっとした様子で、こういった。
「後で俺が麺だけ食べるよ」
 しばらくして彼は具のないクイッティオを啜っていた。
 麺料理を頼み、具しか食べないタイ人をときどき見かける。一時は、タイは豊かになったものだと眺めていたこともある。ガオラオという注文法もある。これは麺料理の麺を抜いたものだ。具とスープだけ。ご飯と一緒にガオラオをおかずにして食べる。タイ人の会話を聞いていても、「あの店のスープが濃厚でいい」とか、「フィッシュボールがおいしい」といった内容は耳にするが、「麺がおいしい」という話はあまり聞かない。クイチャップのような麺に特徴のある店は別だが。
 タイ人は麺へのこだわりが薄い。そういえば手打ち麺というタイ語も僕は知らない。
 そこへいくと、日本人は麺好きだ。「もちもち」、「ちりちり」といった麺の形容詞は多彩だ。細麺、太麺……それぞれにこだわりもある。ラーメン屋に入り、
「麺抜きでお願いします」
 という会話を耳にしたことがない。もっとも最近の日本でも、ダイエットのために麺のないラーメンが登場しているというが。タイ人のそれは、ダイエット色は薄い。ガオラオにしても、代わりにご飯を頼む人が多い。やはり麺への熱の問題に映る。
 東アジアと東南アジアを分ける一線があるとすれば、そのあたりなのかもしれない。中国や台湾では、麺に存在感がある。ベトナム人もフォーにはうるさい。しかしカンボジアやタイ、ラオスになると、麺そのものへのこだわりは薄れていく。そして麺文化が根づいているのはミャンマーまでで、バングラデシュ以西は、麺料理そのものが消えていく。
 日本のサラリーマンの典型的な食事は、朝パン、昼麺、夜ご飯……という話を聞いたことがある。僕の日本での食事を考えても、その傾向は強い。しかしタイ人の食事を見ていても、麺の占める部分は多くない。人によっては、3食ご飯になる。いや、これが一般的なタイ人だろうか。麺、そしてパンは、ご飯という牙城をなかなか崩せないでいる。

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○クリックディープ旅=再び「12万円で世界を歩く」のシリーズが連載中。
○どこへと訊かれて=人々が通りすぎる世界の空港や駅物。
○東南アジア全鉄道走破の旅=苦戦を強いられている東南アジア「完乗」の旅。いまは番外編を連載中。
○タビノート=LCCを軸にした世界の飛行機搭乗記
  

Posted by 下川裕治 at 12:17Comments(0)